刑事狩り
「まあ座って。よし、では決まりだ。そこで君にもうひとつ頼みがあるんだ」
「はい、何でもおっしゃってください。あたしで出来ることなら何でも」
有田は座り直すと姿勢を正して佐伯からの言葉を待った。
「実はね、私はうちの課を変えたいと思っているんだ。その手助けをお願いできないかと思ってね」
「課を変える、ですか。もちろん課長のお願いなら手伝いはしますが、一体どんなことをすればいいんですか? あたしに出来ることならいいんですが」
「大丈夫だよ。そんなに難しいことではないんだ。君にやってもらいたいことは、普段の勤務を通じてうちの課員の情報を集めてもらいたいんだ」
「情報ですか。それならあたしにも出来そうですが、どんな情報を集めればいいんです?
事件のこととかですか?」
「事件のことは黙っていても報告が上がってくるから必要ない。私が知りたいのは、うちの課員が陰で何を言っているのか、また何をしているのか、だ。君は新人だし女性だから奴らも警戒せずに何でも話すだろうから、情報を入手しやすい」
有田は表情を硬くした。
「それって、あたしにスパイみたいなことをしろっていうことですか? 課長の悪口を言ってる人を教えろということですか」
この子はさすがに頭が切れるな。国家一種に受かるだけのことはある。
佐伯は有田が警戒しないように笑みを浮かべながら説明する。