刑事狩り

「はい、重々承知しております」

「加藤とはまだ意思疎通ができていないようだな。刑事課長たるもの、加藤みたいな昔堅気の刑事を使いこなさないと。加藤は優秀な刑事だ。それは理解しているな?」

「はい」

「ならいい。加藤の暴走を止められなかったのは課長の責任でもある。だから加藤ばかりを責めないようにな」

「わかりました」

「そうは言っても、被疑者を逮捕したのは良かった。起訴になるまではしっかり捜査をするように」

「承知しました」

佐伯は木下に深々と頭を下げ、署長室をあとにした。

「課長、署長は何と?」

佐伯が刑事課に戻るとすぐに城島が寄って来た。

「ああ、一課長からお叱りを受けたって言ってたよ。こうなると今後は一課の支援は受けられそうもないな」

「はい。何とも申し訳ありません」城島が頭を下げた。

「加藤は?」

「ホシの供述の裏を取りにあっちこっち飛び回ってますよ。全く、あいつは腕はいいんですがね。呼びますか?」

「いや。署長から加藤を責めるなと釘を刺されたから好きなようにさせておけ。だがな、好き勝手できるのも今のうちだ。いずれ奴はこの組織から消えて行く」

「課長、何を考えているんですか?」

城島が不安そうな顔で佐伯を見つめた。

「別に。補佐は余計なことは考えずにこのホシを起訴に追い込むために全力を尽くしてくれ」

「了解しました」

城島は足早に佐伯から離れて行った。

あのクソ野郎が。せいぜい今のうちに楽しんでおくんだな。もう二度と、ホシの調べなどできないようにしてやる。