「各署、組織改編に向けて順調のようだな。言うまでもなく、我々の目的はひとつ。有能な奴は残し、無能な奴は切る。それによって組織が生まれ変わり、より強靭になる。引き続き改革を進めてくれ。佐伯、お前のところはどうだ?」
各課長が佐伯に注目する。このメンバーの中で、角田から呼び捨てで呼ばれるのは佐伯だけだ。
それこそが「ゼウスの一番の息子」である証だ。
「はい、選別については進んでおりますが、不適格者の排除に手間取っております」
「ほう。お前ほどの男が手を焼くとは、奴らもやるな」
「はい、奴らは処分を受けないようギリギリの線で組織に反発しておりますので」
「なるほどな。ところで有田里香はもう刑事課に配置になってるな? どうだ?」
「はい、情報は逐一報告するよう下命したのですが、Sとしてはまだまだかと」
佐伯の報告を受け、角田が菊地に目をやる。
「菊地君、今日このあと何かプライベートの予定でもあるか? なければこの佐伯に女性の扱い方でも教えてやってくれ」
「承知しました。佐伯課長、よろしく」
菊地は佐伯に向かって微笑んだ。
「ということだ、佐伯。しっかり教えてもらえ。佐伯な、お前の課は実績がトップクラスだが黒い噂も絶えない。だからお前を配置したんだ。お前の所は例の加藤が中心となっている。奴を叩き潰せばあとは簡単だ」
「はい、承知しました」
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