県警本部大会議室において、警察署の刑事課長が集められ、角田に対する定期報告会が行われた。

「みんなどうだ? 改革は進んでいるかな? 組織改編に向けて、真に必要な刑事の選別をするということは、裏を返せば不適格者を排除するということだが、どうだ、卯月君のところは?」

「はい本部長、選別については順調に進んでおりますが、当署にありましては、被疑者の取調べ時における不適正事案や、上司からの指示命令無視、職務怠慢等の規律違反が発覚いたしまして、いずれの者についても懲戒処分により職を辞しております」

「ふむ。組織の方針に従えない者はどんどん処分して排除してくれ。そうすることで真に組織に必要な者が見えてくる」

「はい、承知しました」

「奈良橋君のところはどうだ? 資料を見るとかなり改革が進んでいるようだが、何か施策はあるのか?」

「はい本部長、うちは課の中にSを置いておりますので、ここから上がってくる情報を基に選別を進めております」

「なるほどSか。しかしそうは言っても連中はそうそう仲間を売らないだろ? どうやって手なずけたんだ?」

「はい、連中に本部異動をチラつかせたらイチコロでした」

「それはいい。引き続きやってくれ。他に何かある者はいるか? 菊地君、女性の視点からどうだ?」

角田に指名された菊地は、栗色のロングヘアをなびかせて立ち上がった。薄化粧だが整った顔立ちに真紅の口紅が女性らしさをアピールしている。赤のワンピースがよく似合い、菊地がつけている品のいい香水が会議室中に漂った。

「君のところも成果が上がっていると聞いているが、なにかいい施策でもあるなら皆に教えてやってくれ」

「うちは実績が全て。努力よりも結果。実績の上がらないものは評価も下げ、給料も下げます。実績が上がるまで徹底的に指導して追い込みます。いやなら辞めてもらうだけ。私は県民のために当たり前のことをしているだけです」菊地は笑顔でさらりと答えた。

「いやいやそれは厳しい。私が君の部下ではなくてよかったよ」

「ありがとうございます」

「その調子で引き続き頼むぞ。他に意見はあるか?」

各課長から一通り報告を受けたあと、角田は席上のマイクに顔を近づけた。