「課長、加藤は私や副署長立ち会いで課長と話をしたいと言ってきている。課長とのわだかまりを取りたいと」
「私にわだかまりなどありません。私が思うのは、上司の命令を遵守するか、組織にとってふさわしい人物かどうか、ただそれだけです。彼はそのどちらにも当てはまりません。そもそもなぜ署長や副署長の立ち会いが必要なんです? 私とサシで話をすれば済むことじゃないですか」
「それもそうだが、向こうは課長と力を合わせて課を盛り上げていきたいって言ってるんだよ。課長も少しは歩み寄ったらどうだ?」
三橋が木下の顔色を窺いながら話す。副署長も奴の言いなりか。ここで何を言っても無駄だ。
「わかりました」
「課長、君にはまだ将来があるんだから、ここでゴタゴタしてもしょうがないだろう。下手な意地を張らずに加藤と早く和解して、二人で力を合わせて課を盛り上げてくれ。副署長、こういうことは早い方がいい。早速これから段取りを組んでくれ」
「了解しました」
三橋が木下に頭を下げた。
「課長は連絡があるまで自席で待機していてくれ」
「承知しました」
佐伯は木下と三橋に一礼をして署長室をあとにした。加藤の野郎、俺が署長の前で言いたいことを言えないのをわかっていての仕業か。この借りはきっちり返すから覚悟しとけ。
佐伯は歯軋りしながら刑事課へと戻って行った。