「この小さな子たちは、トビムシやササラダニって言うらしいわ」

「ここにルーペがあるから、よかったら見てみて」

と千尋に促されて、山川はルーペをのぞいた。もぞもぞと動いている様子を少し観察すると、内燃や大河、川原、出丸にも渡して見せた。

小さな生き物たちを土に戻し、穴をすっかり元通りにすると、山川は重盛に、

「ここの放牧地で、植生調査と少し土をいただいていいですか」と許可を求めた。

「かまわないさ」と重盛。 

「さて、水産クラブの面々は、メムを見たいんだったよな。メムはこっちにある。案内しよう」

重盛に連れられて、大河、川原、出丸はメムの方に向かって行った。千尋と山川、内燃は、放牧地の植生調査を始めた。

放牧地は広い。一牧区が三haはある。山川は内燃と相談して、ランダムに一〇カ所調査ポイントを選んだ。

山川は手際よく調査ポイントにコドラードを置く。内燃が記録を担当する。山川と千尋は、まず草の種類ごとに草丈を測っていった。

「チモシー、一五・三cm」

「白クローバー、六・四cm」

測りながら、山川はあまり見たことのない草の存在に気が付いた。

「この先端がボートのような形をした、針のような草は何だろう? これが一番たくさんありそうだ」

「そうね、うちではこの草が一番多い気がするわ」と千尋。

内燃が二人に助け舟を出す。

「それはなぁ、芝生によく使われる草だ。牧草の一種のケンタッキーブルーグラスって言うんだ。草地の密度が濃くて、昼寝ができそうなのも、その草のせいかもな」

「そういえば、シバムギがないですね」

山川は、シバムギがこの放牧地では見られないことに気が付いた。