四 波乱万丈の里山生活
その一 移住仲間たちとの夕食会
少し間をおいて、ぎんちゃんは言います。
「分かるよ。すごいね。でも、目の前で生け捕りした生き物を食うのを見せられると動揺するよ」
「ぎんちゃんの食っている肉のような物は何だい! 言ってみな!」
黒猫さんが怒り出すと、珍しく三毛猫さんも怒って言います。
「豚か鳥の肉でしょ! 前の飼い主が美味い美味いと言ってた。人間だって動物の肉を平気で食べるんでしょ!」
なんか、その場が険悪になってしまった夕暮れの会でした。
この里山に引っ越して来てから、ゆったりとした日々を送っています。でも、結構やることは多いし、考えることも多くなりました。
老いと共に、私はなんでこの世に生まれて、そして何を残せるのだろうかと考えれば考えるほど悩ましくなります。
それを救ってくれたのは、一緒に移住した生き物たちです。農作業している時も、休憩の時も誰かが覗いてくれます。
一つ困ったことが起きました。黒猫さんからの情報だけど、今までに見たことのない大きな生き物に追いかけられて、逃げて帰って来たとのことです。
ぎんちゃんは薄々分かりましたが、黒猫さんや三毛猫さんは都会育ちの猫なので、見たことがないのは当然です。少し黙っていて話を聞こうと思いました。
途中から加わってきたカラスさんも考えながら聞き入っています。カラスさんも都会育ちのカラスだから、きっと見たことはありませんが、プライドが高いのか知っているかのように聞き始めました。
「それはどれくらいの大きさかな。以前住んでいた田んぼや畑では見られない大きさだと牛か豚かな」
黒猫さんは、牛も豚も見たことがないので困りました。
「犬を大きくしたような大きさかな。体が茶色で怖い顔をしていて、物すごく怒りっぽかったよ。すごい速さで追いかけて来たので、逃げ切れないと思って急いで木に登ったよ」
カラスさんも黒猫さんの話と上手く噛み合いませんので、その場凌ぎに言いました。
「明日、少し様子を見に森の中に入ってみるよ。どの辺りか教えてよ」
黒猫さんは、森の様子を伝えました。
「柿と栗の実があった木の辺りだよ」と言いました。カラスさんも、なんか厄介なことを引き受けてしまったと思いましたが、格好付けて言います。
「分かった。調べてみるよ」