【前回の記事を読む】ときめく恋愛はあり?なし?ほどよい距離感の先にあるものとは
結婚のカタチ
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公園のラジオ体操も終わり、外は静かになっている。
「ねえ、うちのマンションの前でラジオ体操をしているでしょ。今は朝早くからうるさいなと思うこともあるけど、私も子どもの頃、夏休みには毎日通っていたのよね。終わってスタンプを押してもらうのが楽しみで。皆勤賞だと最後にノートとか鉛筆とかもらえるので、毎日がんばって行ったものだわ」
「僕も行っていたよ。我が家は学校の近くだったので、ここみたいに音楽が聞こえたよ。僕はボーイスカウトに入っていたから、途中何日かキャンプで欠席するため、皆勤賞はもらったことがないな。でも、今でも第一も第二も覚えているよ。君は覚えている」
「もちろん。時々、外の音楽に合わせて体操をしているわ。朝の運動になっていいと思って」
健一は、立ち上がってコーヒーを追加した。良い香りが漂ってくる。
「いきなりだけど、君は別居結婚には関心あるかい」
健一は美紀の方を向き、真面目な顔をして聞いた。
「聞いたことはあるわ。でも、どうして急に」
「いや、僕のバツイチの原因が、仕事が忙しくてあまり帰ってこなかったこと だっただろ。だから、最初から別々に住んでいて、今の僕たちのように時々会うほうが、お互いストレスがなくていいかなと思ってね」
「それって、結婚を考えてくれているということなの」
「もちろんそうだけど、前のことがトラウマになっていて、完全同居だと、君がまたどこかに行ってしまう気がしているんだよ」
「う~ん、別居結婚ねえ」
美紀はカップを持ったまま、しばらく考える。
「でも、同居していたら、帰る面倒くささはないわよね。あなたが忙しいことは分かっているから、たとえば、夜会議や接待があるとか、出張だとかをカレンダーに書いておけばいちいち聞かなくてもいいと思うし、私も仕事で遅くなるときがあるので、お互いに状況を把握しておけば大丈夫じゃないかしら。
それから、夕食は帰りが遅くなるときは先に済ませるとか。健一さんが先に帰って私が遅いときも同じよね。まあ、どのくらい遅くなるかとか、予定変更だとかはメールをすればいいことだけど」
「なるほど、確かにそうだよね。それも一案だ」
「とにかく、試しに一週間僕のところで過ごさないか。今のアイデアがうまく機能するか実験してみたいんだ」
「分かったわ。すぐというわけにはいかないけれど、二週間後なら大丈夫だと思うわ」
「よし、善は急げ。さっそく実験開始だ」