タヌキさんは少し驚いています。
「静かだから、普通に成長していると思ってたけど、この木々も生存競争しているんだね」
ぎんちゃんはさらに続けます。
「長い長い時間を掛けた生存競争で、この森も淘汰された森になるんだよ」
ぎんちゃんが最後に話す言葉がタヌキさんには分かりません。だから聞き直します。
「ぎんちゃんは何がいいたいの。競争しなくて生きていけると思ってるの」
ぎんちゃんは寂しそうです。
「生きるための競争は、人間も動植物も同じさ。強いものが生き延びられるのが進化だった。だけどその進化は、もう平等ではないよね。そもそも、人間がこの百年ほどで地球を破壊し始めた。もうしばらくは元の姿には戻らないよ。人間の生き方を変えない限りね」
タヌキさんは驚いて聞きます。
「そんなに酷いのかい、この地球環境は」ぎんちゃんが細かく説明します。
「小さな虫たちがいなくなってきただろう。もっといなくなるだろう。どんどん暑くなって、すごい雨が降る地域と、乾燥する土地が出始める。人間だって棲み難くなりつつある。分かっているけど生きるために経済競争をしているから、その競争で地球環境が悪化したって止められない。人間の競争という行動は末期症状だね」
ぎんちゃんの否定的な言葉には、いささかタヌキさんも飽きてきました。
「ぎんちゃん、大丈夫かい。頭がおかしくなってないかい」
ぎんちゃんは正気でした。
「都会でこんなこと言い出したら、誰も相手にしてくれないよ。馬鹿野郎、働けってね」
最後にタヌキさんがきつく言います。
「もっと直接的に言ってくれよ。ぎんちゃんは何をしたいの。どうすれば棲む環境が良くなると思っているんだい」