三 物語のプロローグ
ぎんちゃんは、付け加えるように言います。
「私はあと何年生きられるか分からないけど、こんな気持ちで死んでいきたくない。次世代の人達には、考えを変えていって欲しいと思った。あの夏から秋の夕暮れの会で、ようやくみんなの本当の苦しみが分かったよ。タヌキさんのお父さんの時代だよ。もう五年がたったね」
ぎんちゃんが結論を言います。
「何も奇麗ごとを言う必要もない。人間の馬鹿さ加減を直す行動をする、ということだよ。タヌキさん、分かってくれるかい」
タヌキさんは戸惑ってます。
「よく分からないけど、一つは、はっきりしてきたかな。人間は多くの生き物や森の存在を搾取して生き延びてきた。そして、多くの人間は、それを当然のことと思っていたということかな」
ぎんちゃんは少し安堵して言います。
「そうだね。このまま行けば、人間は自分で生態系と自然を破壊して、壊滅的な影響を受けるだろう。自滅すると思うよ」
タヌキさんは、一番聞きたいことを、もう一度確かめるように聞きます。
「人間は何を求めて生きているんだい」
ぎんちゃんは、寝ころんでタヌキさんと一緒に上を見上げて言います。
「木々の葉を見上げてごらんよ。太陽の光が差し込まないほど密集しているよね。何故だか分かるかい」
タヌキさんは答えられません。
「そこまでは考えていない。雨風がしのげるからありがたいけどね」
ぎんちゃんは続けます。
「木々は自分を成長させるため、枝を伸ばし、光をいっぱい独占できるよう伸びてゆく。結果的に日の当たる場所は全部葉で埋め尽くされるのさ。これも静かな生存競争だよ」