エッセイ 人生論 短歌 生き方 2020.07.21 白き錠剤掌(てのひら)に置く 短歌集 生きる 【第10回】 田中 祐子 心かが折れてしまいそうなとき、 寄り添い支えあう、心の歌。 原爆の悲劇、夫との死別、複数の病との闘い……。時代に翻弄されながらも困難と向き合った歌人が、自らの経験を生きる糧に代え、詠みあげる709首。平和で豊かな未来を願い、いまを生きる人に伝えたいメッセージを、連載にてお届けします。 この記事の連載一覧 最初 前回の記事へ 次回の記事へ 最新 第一章 独り 写真を拡大 老いる 写真を拡大
小説 『泥の中で咲け[文庫改訂版]』 【第7回】 松谷 美善 母さんが死んで、一人で生きていかなければならなくなった。高校中退後、月6万円での生活。お墓も作れず母さんの骨と一緒に暮らした 一日中、使いっぱしりをして、クタクタになって部屋にたどり着き、買ってあった少しの菓子を貪り食うのもそこそこに、重たい泥のようになって、布団代わりの寝袋に潜り込む。小さい頃から運動習慣のなかった俺には毎日が、筋肉痛が出るほどキツかった。毎朝、四時に目覚ましをかけて、まだ眠くてフラフラしながら起きる。風呂のついている部屋は、最初からはもらえない。申し訳程度についた小さなキッチンの流し台で、頭を洗って…
小説 『訳アリな私でも、愛してくれますか』 【第19回】 十束 千鶴 傘の中で彼の肩が少し触れた瞬間、心まで近づいている気がしていた 【前回の記事を読む】『SNSの利用者も馬鹿ではないので、自分の有意義な情報を出してくれるアカウントでないとフォローしてくれません』「……さっきはあんなこと言ってごめんね。私の認識が甘かったかも。今度から、岩下君と一緒にSNSの運用に入ってもらおうかな」「はい。じゃあ俺、岩下さんのところに行ってきますね」「あ、うん……」礼は満足げな笑みを浮かべてオフィスを出ていった。その背中を見て、期待とともに不…