市内には合衆国となった最初の十三州が並んだデザインの国旗が作られたベッツィ・ロスの家や、独立記念館、自由の鐘など、当時の人々が苦労しながらも明るい未来を夢見て国づくりをしていた心意気を感じる場所がたくさんある。レンガ造りの建物が並ぶ街並みは、何かほっとする雰囲気を醸し出している。木々の間からは優しい日差しが降り注ぎ、さわやかな風がほほをそっと撫でる。ここでは、忙しく時代の先端を走るニューヨークなどの都会とは全く違い、人々の生活がゆっくりと流れているのが感じられる。

真知子にとって今回のコースは、二年前とほとんど同じ場所を回るので気が楽だ。初めての場所は、このダラスだけだ。添乗員としては初仕事であるので、もちろんガイドブックや地図は持ってきている。やはり多少は緊張している気がする。十一時になって全員部屋に戻ったようなので、真知子と松井も部屋に戻ることにした。

「では、明日またよろしく」

「はい、おやすみなさい」

エレベーターを降り、じゅうたんが敷かれた廊下を歩く。鍵を開けて部屋に入ると、ベッドに座った。ようやく一日が終わった。まだ集まっただけであるが、長い一日だった気がする。明日からがんばろうと自分に言い聞かせた。

真知子はモーニングコールを頼むと、シャワーを浴び、明日の準備に取りかかった。チケットの確認、明日のタイムテーブルの確認などを済ませ、とにかく寝ることにした。明日からいよいよ本番だと思うと、気持ちが高ぶってなかなか眠れない。しばらく旅行案内書を読んでいたが、やはり疲れていたのだろう、そのうち眠ってしまった。