二十一

もう遊びは卒業、これからは本気を出して、後世に残る作品にひたすら打ち込む。ぼんやりとアトリエの雑多な制作物を眺め、来し方行く末を考えた時、オトナの遊び場と公言していたことを思い出して、遊び場だけで終わってしまったらいけない、という気持ちが、ふと修作によぎるらしい。

そうして、いかんいかんと頭をふればたくさんの言質がふるいおちるような感覚になる。これでもかと、毎年毎年この国をおそう自然の災禍は枚挙のいとまがない。

そんな話を知人に話すと、この国の歴史をみればこれが普通のことなんだ、とさらりと言い捨てる。修作がよくこの国の歴史を知らないだけで、過去何年も何年も災禍の続きを繰り返してきた。戦後の昭和数十年間は奇跡的に平穏な時期を過ごしたのだと。その平穏な時代に生まれて、絶好調だったこの国で成長できた君たちは、幸せな時代を生きてきたのだ。

修作の焦燥などその人は意に介してはいなかった。明日の保証などどこにもないのだから、遊びは卒業しなければならない。