8

ピアノ教師のチュ先生は、窓と向かい合った自分の机に座っていた。その時だれかがドアをノックする音が聞こえた。

「どうぞ!」

ドアが開いてヒョンソクが現れた。彼は丁寧にお辞儀をしてチュ先生に挨拶をした。チュ先生がヒョンソクに会うことを喜んでいないのは明らかだった。彼はこの青年の父親の常軌を逸した振る舞いを鮮明に覚えていた。それは彼の人生の中で最も不条理な出来事だった。

「なぜここに?」

「相談したいことがあって参りました」

「座りなさい」

チュ先生は不愛想に椅子を指差して言った。ヒョンソクはヘグムの入った鞄を下ろして腰かけた。

「何を相談したいのかね」

「ジャズフェスティバルのことを聞きました」

「ああ、来週に開催される予定だ」

「僕もフェスティバルに参加したいんです」

「ああ、ヒョンソク、もし私が了承したら、きみの父上が木の棒を持って飛びかかってきて、私を殺してしまうだろうよ。誠に残念だが、どうにもしてやれない。いずれにしても、登録はすでにいっぱいだ。さあもう行きなさい、ヒョンソク。悪いが、帰りなさい」

彼は急かした。

「ですが、僕はピアノを弾きません。ヘグムを弾くつもりです」

不思議に思ってチュ先生は言った。

「だが、これは韓国の伝統楽器祭りではなく、ジャズフェスティバルだぞ」

「わかっています。ちゃんと理解しています。僕がヘグムで演奏するのは、ジャズです!」