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中津の鱧
中津の鱧は骨が軟らかくて美味。2年に一度くらいの割で中津の料亭「筑紫亭」にお邪魔する。何故「筑紫亭」なのかというと、お店で扱っている鱧が上質だからだ。一般に、中津の鱧は骨が軟らかいが、その中でも骨の軟らかい、味の良い鱧を「筑紫亭」は提供してくれる。中津の他のお店でも鱧を頂く機会はあるが、やはり鱧自体が違う。
鱧は小骨が多い。それを全て取り除くのは時間が掛かりすぎて実質上不可能だ。そこで骨切りという技術が重要になってくる。小骨が気にならないくらいに細かく包丁を入れ、しかも皮を切らずに残さなければならない。包丁を入れる回数も、一寸につき26筋入れて初めて一人前と認められると言われている。単位で表すと約1・2mmごとに包丁を入れることになる。
しかし、骨が軟らかくなければ、1cm毎に8回以上も包丁を入れるなんて事は出来ない。骨の硬い鱧にそんな骨切りをしたら、たちまち鱧のミンチができあがってしまうからだ。
豊前海は魚介類の宝庫と称されている。耶馬溪辺りに広がる栄養たっぷりの水脈は山国川となり、海へ運ばれ、魚介類が豊かに育ちやすい環境を作る。豊前海の鱧は「つの字鱧」、「真鱧」などと呼ばれ、骨が軟らかいだけでなく、良質なたんぱく質やビタミン、ミネラルもたっぷり含まれている。鱧の皮にはコラーゲンが多く含まれており、グラムあたりのカルシウムは牛乳の約2倍だそうだ。
鱧は夏が旬と思ってしまいがちだが、季節毎に味が違い、それぞれが美味しいのだそうだ。
夏は、最も体重が重たい時期で、脂肪分が少なく、さっぱりとした上品な味わいになり、秋は、産後の時期にあたり、食欲が増え急激に太るため脂肪分が多く、身が締まって脂の乗りも良い。最も美味しい季節とも言われている。
私は大阪生まれだから、鱧と言えば、湯引きで梅肉を少量付けて頂く。「筑紫亭」では鱧ちりを特製のポン酢で頂くのを良しとしておられるが、あっさりした梅肉も捨てた物じゃないと私は思っている。そこで、お店で鱧を頂く時は、梅肉を持参する。みりんを混ぜたような甘い梅肉は好きではない。鱧の味は淡泊なので、梅肉もそれを邪魔しないあっさりした物が良い。地元と言うこともあって、大分県日田市大山町で作られている梅肉を愛用している。塩味控えめで、色よし、味よしである。