空き家の問題

一方で昨今では相続不動産の空き家問題が取り沙汰されており、ニュースなどで目や耳にする機会も増えているかと思います。実家に住んでいた両親が亡くなり、誰も住まなくなってしまった家をどうしたらよいかと相談を受けることも多くなってきています。

平成三一(二〇一九)年四月二六日総務省統計局の平成三〇年住宅・土地統計調査によると、空き家数は八四六万戸となっており、総住宅数に占める空き家の割合は一三・六%と過去最高となったようです。空き家数の推移としては昭和六三(一九八八)年から平成三〇(二〇一八)年までの三〇年間で四五二万戸増加をしているようです。

空き家は相続をしたものの相続人が住まなかったり、不動産が共有により処分が難しかったりなど、様々な理由によって放置されていることがあります。放置されることにより、犯罪(放火・不法占拠)や災害(火災・台風)などによる倒壊のリスクが高くなります。利用をしなくなった不動産がそのまま空き家になるケースが多くなり、今後も年々増加をしていく可能性があります。

写真を拡大 [図表4-1]空き家数及び空き地率の推移—全国(昭和38年〜平成30年)
写真を拡大 [図表4-2]空き家の種類別割合の推移—全国(昭和53年〜平成30年)

所有者不明土地の問題

空き家問題と共に取り沙汰されるのが、所有者不明土地の問題です。平成二八(二〇一六)年度に国土交通省が実施した地籍調査における土地所有者などに関する調査を活用した推計によると、所有者不明の土地(不動産の登記簿謄本などの調査をしても所有者が判明しない、または所有者が判明しても連絡がつかない土地)が占める割合は、全国で二〇・三%にも及び、土地の面積では、約四一〇万haに相当します。

これは、九州の土地面積三六八万haを超える広さです。所有者不明土地が増加していることを鑑み、令和元(二〇一九)年六月一日、「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法」が施行されました。これにより、一定の手続きを経て、所有者不明土地への立入り、障害物の伐採などが認められ、さらには、都道府県知事の判断で、道路や公園、教養文化施設などに利用することに限って、最長一〇年の土地使用権を設定することが可能になりました。

加えて、法務局の登記官が所有者の死亡後長期期間にわたり相続登記がされていない土地について、亡くなった方の相続人らを調査したうえで、職権で長期間相続登記未了である旨などを登記に付記し、法定相続人らに登記手続を直接促すなどの不動産登記法の特例が設けられました。

相続人にとっては、知らぬ間に相続した土地が、知らぬ間に利用される・相続登記されてしまう訳です。