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第一章 人類は農業技術の発展によって人口を増やしてきた

《一》近世までの農業の歴史

 農業の起源と伝播 

人類が独自に農業を始めた起源地は、そう多くはありません。『自然の叡智 人類の叡智』で述べている人類の「創造と模倣・伝播の法則」(どこかで創造されたことで、それが便利であるとなれば、模倣され伝播されて普及していくということ)は農業に典型的に表れています。

今のところ、農業の独自の起源地と認められていますのは、次ページ図1のように、西南アジアと東アジアおよび他数ヶ所の起源地で、その他の地域へはその農業技術が伝播していって農業が始まりました。

一万年前の西南アジア(肥沃な三日月地帯)は、コムギなどの起源地となりました。この西南アジアには家畜化可能な哺乳類も豊富に生息していましたので、この地域で一万年前にヤギ、ヒツジ、ブタ、八〇〇〇年前にウシなどが家畜化され、農業と一緒に普及していきました。

五大家畜のもう一つのウマは六〇〇〇年前に南ロシアで家畜化されました。この西南アジア起源の農業(コムギ作)は、紀元前七〇〇〇年頃から四周に伝播し始め、西のヨーロッパの方には、クレタ島から始まり、イギリス諸島には紀元前四〇〇〇年頃に、フィンランドには紀元前三〇〇〇年頃に到達したと思われます。

南西に伝播した農業は、紀元前六〇〇〇年頃にはアフリカのエジプトに到達し、エジプト文明の起源となりました。東に伝播した農業は、紀元前五〇〇〇年頃にはインドに達し紀元前二六〇〇年頃から、インダス川流域にインダス文明が栄えました。