はじめに
二〇一九年一二月から始まった新型コロナウイルスのパンデミックは、二〇二一年に入っても猛威を振るっていますが、発展途上国を含めて世界全体のワクチン接種が終わり、パンデミックが一刻も早く収束することを願っているところです。というのは、地球温暖化の影響は当初考えられていたより、はるかに早く、しかも大きくなるのではないかという懸念が出てきており、人類挙げて地球温暖化対策に一刻も早く取りかからなければ手遅れになるからです。
地球温暖化対策については、二〇一五年のパリ協定に従って、二〇二〇年からすべての国が参加して実施することになっていますが、近年、南極大陸、北極海、グリーンランド、ヒマラヤなどの氷雪の融解、シベリアなどの永久凍土の崩壊やメタン発生、ブラジル・オーストラリア・カリフォルニアなどの消えない山火事などが起きてきています。
このような現象が続くということは、今まで温暖化ガスを吸収してくれていた地球(自然)が限界に達し、逆に温暖化ガスを吐き出して、それがさらに地球を高温にし、高温が高温を呼ぶというドミノ現象が起きて、しかもそれが一度始まってしまうと、どうにも人為的には止めようのない劇症型地球温暖化(高温化が早く急激に進行し、荒れ狂う地球の状態になる温暖化)に陥る可能性があります。
劇症型地球温暖化となれば、とくに人類の食料生産に大きな影響を与えることが考えられます。今までのような災害では食料不足が起きても緊急輸入とか、食料備蓄で何とかなると思われていましたが、地球温暖化はパンデミックと同じように全世界で同時に起きます。しかもパンデミックと違って、数年で収束するのではなく、いったん、劇症化した地球、つまり、「荒れ狂う地球」になってしまいますと、その状態が半永久的に続きます。
これに対処するためには、今まで食料を大量に輸出してきた国をも含めて、食料生産システムの根本的な見直し強化が必要になります。しかも、地球温暖化が劇症化すればするほど、食料生産に努力しなければならなくなりますが、先進国、途上国とも、現在の農業は、農業機械、化学肥料、農薬などすべて、石油にどっぷりつかった農業です。食料増産にはげめばはげむほど、温暖化ガスの排出量が増大するという矛盾にぶち当たります。人類はこの矛盾をどう解決するか、つまり、脱炭素をはかりつつ、食料生産を抜本的に強化する農業システムというものが存在するのか。それが問題です。