「弾く」と「聴く」一次予選はテープ審査ですんなり通った。そして二次予選の会場だが、これはやはり縁というしかないだろう、廉が勤める新聞社の浜風ホールだったのだ。花冷えの青空が澄みわたる午後、廉はホールに向かった。シューボックス型、つまり「靴箱のような立方体」という意味の、長細い室内楽専用ホールで、真ん中辺りの席に座った廉の目に、舞台の和枝は随分遠く見えた。しかし彼女の両手が振り下ろされ第一音が耳に…
小説
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