考えてみれば橘くんとは、付き合う前から噛み合っていなかった。高校二年の夏、終業式の日の放課後。彼は帰り際の私に声を掛け、まだひと気の多かった教室から廊下へと連れ出して、単刀直入に切り出した。「付き合ってくれない?」「……どこに?」十六歳の神野あすみは、真顔でそう答えていた。すると彼が「ええ?」と大げさに声を上げる。「そんなベタなボケかましてくるの? 神野さんって天然?」より可能性の高い文意を採用…
[連載]人生の切り売り
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小説『人生の切り売り』【第9回】亀山 真一
欲していたのは経験だった。だからたいして好きでもない男の恋人になり、キスをして、初めてまでも捧げてしまった。
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小説『人生の切り売り』【第8回】亀山 真一
彼氏ができたと溢れんばかりの笑顔を見せながら報告してきた妹。「……タクミくん?」その名を聞いて、急に嫌な予感がした
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小説『人生の切り売り』【第7回】亀山 真一
「ごめん」と、こちらが拍子抜けするほど素直に首を垂れ、謝ってきたイケメンの彼
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小説『人生の切り売り』【第6回】亀山 真一
「あんな年下のイケメンよく捕まえたわよね。しかも結構続いてるでしょう」
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小説『人生の切り売り』【第5回】亀山 真一
コンプレックスである大火傷の痕。悪魔は「大事に取っておいたんだ?」と冷たく言った
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小説『人生の切り売り』【第4回】亀山 真一
不意に彼が、こちらへ向かって手を伸ばした。冷たい指先が顎を捕まえ、そして唇に…。
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小説『人生の切り売り』【第3回】亀山 真一
独身アラサー女の私の部屋に、突然年下のイケメンが転がり込んできて…。
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小説『人生の切り売り』【第2回】亀山 真一
原稿を手に取ろうともしなかった女性編集者だったが、イケメンが一言頼むと状況は一変
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小説『人生の切り売り』【新連載】亀山 真一
「君の人生、僕が売ってあげようか?」小説家の前に現れた悪魔は…