掛川が小林警部補と会えたのはその日の夜遅く、二時間も警察署で待たされた挙句のことだった。夜の九時近くになっていた。小林修吾(しゅうご)は四十がらみのがっちりした体格の、いかにも田舎の実直なおまわりタイプの男だった。掛川が名刺を差し出すと彼は自分が神林邸の放火事件の担当刑事だったと認めた上で、勝ち目のない裁判に賭ける若い弁護士を、さも気の毒だと言わんばかりに眺めた。小林は事件に対する捜査には自信を…
[連載]レッド・パープル
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小説『レッド・パープル』【最終回】そのこ+W
父親は既に死んでいた…なら何故すぐに警察を呼ばなかった? 自分が殺したと思われるのが怖かったと言うなら、その行動は不自然だ
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小説『レッド・パープル』【第16回】そのこ+W
満州では欲しい物は何でも手に入るほど裕福な暮らしをしていたが、あることがきっかけで一家の暮らしぶりは一転し…
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小説『レッド・パープル』【第15回】そのこ+W
世の中にスローガンだけが歩き回っていた「男女同権」。僕には基地のアメリカ軍人の子供たちを通してもたらされたものだった
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小説『レッド・パープル』【第14回】そのこ+W
弾丸が撃ち込まれ、辺りに硝煙が立ち込めた。日本人の命がアメリカ兵の百分の一の値打ちもなかった時代、僕の日常は…
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小説『レッド・パープル』【第13回】そのこ+W
戦後見かけることの少なくなった瀟洒な邸が火災。恋人を父に奪われた息子が父を恨んで殺し、家に放火!?
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小説『レッド・パープル』【第12回】そのこ+W
分家と立場が逆転…。だが、嫌がらせをしてきた男が死んでいるのが発見された
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小説『レッド・パープル』【第11回】そのこ+W
日本海有数の海運会社に成長させた辣腕事業家。あこぎなことも平気でやる男との噂が…
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小説『レッド・パープル』【第10回】そのこ+W
転校した中学校で日本は戦争に負けたんだ、と思い知らされる出来事があった
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小説『レッド・パープル』【第9回】そのこ+W
引っ越してきた町はあまりにも荒んでいた!医者の家だが衛生状態は他の家より悪かった
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小説『レッド・パープル』【第8回】そのこ+W
〝七千万総玉砕〞の呪縛から解かれた戦後。敗戦から三カ月後に父が戻ってきた
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小説『レッド・パープル』【第7回】そのこ+W
父親殺しの冤罪、疑念の火事、家族の裏切り、孤立無援の主人公は果たして
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小説『レッド・パープル』【第6回】そのこ+W
「親父殺しの犯人にされてしまうと思った」思わず逃げ出した隙に、家は炎に包まれていた…
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小説『レッド・パープル』【第5回】そのこ+W
ゼミ仲間の屋敷で研究会。思いがけないもてなしの理由とは?
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小説『レッド・パープル』【第4回】そのこ+W
戦後すぐの田舎風景に似合わぬ洋館。デザインの決め手は「周囲への威圧」
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小説『レッド・パープル』【第3回】そのこ+W
かけられた「父親殺しの嫌疑」…拘置所から届いた息子の訴え
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小説『レッド・パープル』【第2回】そのこ+W
【小説】「戦争の体験」――あの事件を避けて自分の青春を語ることは許されない
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小説『レッド・パープル』【新連載】そのこ+W
【小説】1951年の冬、田舎町の屋敷が燃えた…警察が示した見解とは