思い出す度に小さなとげが疼くような記憶がある。製造業の経理課で働いていた頃だった。営業部の林君が「お母さん、お金ちょうだい」などとおどけた様子で、出金伝票を持ってやってきた。こちらもつい気を許して「奥様、お元気?」などと言いながらお金を渡したのである。彼は急に表情を強張らせ「あっ、はい……」と返事を濁して戻っていった。彼を見送って、若い女性の同僚がさらっと言った。「あの二人、離婚したんですよ」ド…
[連載]午後の揺り椅子
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エッセイ『午後の揺り椅子』【最終回】佐東 千津
消えない後悔…ひょうきんな同僚を傷つけた「何気ない一言」
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エッセイ『午後の揺り椅子』【第15回】佐東 千津
娘を大学へ行かせたい…上京して仕事に奮闘した母親の愛
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エッセイ『午後の揺り椅子』【第14回】佐東 千津
春の小布施。懐かしの「故郷」。母校の校歌の作者は…
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エッセイ『午後の揺り椅子』【第13回】佐東 千津
思い出の場所、高校時代への郷愁。もう一度見たい景色は今
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エッセイ『午後の揺り椅子』【第12回】佐東 千津
女子高生、キャンプの事件簿「カレーライスを一口食べたら…」
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エッセイ『午後の揺り椅子』【第11回】佐東 千津
「働く女の努力の一片だった」女子高教師たちの綿づくり事情
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エッセイ『午後の揺り椅子』【第10回】佐東 千津
道行く少女たちに声をかけた中年女性。驚くべきその要件は…
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エッセイ『午後の揺り椅子』【第9回】佐東 千津
「女湯」で何も言い返せなかった少年…五十年後の告白
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エッセイ『午後の揺り椅子』【第8回】佐東 千津
「大雪が、いつか笑える思い出になる」…新成人に贈る言葉
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エッセイ『午後の揺り椅子』【第7回】佐東 千津
人助けがままならない…70歳を超え改めて悟った切ない現実
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エッセイ『午後の揺り椅子』【第6回】佐東 千津
【いとしい思い出たち】ムッキーちゃんと工学博士
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エッセイ『午後の揺り椅子』【第5回】佐東 千津
年末恒例の「年賀状」交換…やめるべきタイミングはいつ?
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エッセイ『午後の揺り椅子』【第4回】佐東 千津
「あの意地悪な姑が…」母が語った、戦時中の嫁姑事情
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エッセイ『午後の揺り椅子』【第3回】佐東 千津
家族の思い出の味、おやき…亡くなってから知った母の真実
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エッセイ『午後の揺り椅子』【第2回】佐東 千津
職場でおせちの話になったとき、取締役が明かした意外な一面
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エッセイ『午後の揺り椅子』【新連載】佐東 千津
パソコン新しく変えたものの…「助けて!」機械音痴の苦悩