トクヴィルのこの見方に対し、吉田健一氏は先に引用した『ヨオロッパの世紀末』の中で、日本に導入された「紳士」という言葉の歴史についてその歪みを指摘した。『それ(=紳士―引用者註)は自由、平等を愛し、酒も飲まず、たばこを吸わず、女を丁寧に扱い、謹厳そのもので、それでも人間かと思われる代物であり、その禁欲的な面が儒教で育った当時(=明治―引用者註)の日本人の好みに適ったということは解っても、日本の士と…
[連載]詐欺師×スパイ×ジェントルマン
-
評論『詐欺師×スパイ×ジェントルマン』【第4回】鱸 一成
「紳士」という言葉から読み取る近代ヨーロッパ社会。後付けの才能が生み出す、歪んだ紳士のすがた。
-
評論『詐欺師×スパイ×ジェントルマン』【第3回】鱸 一成
詐欺師から紳士へ「成りすまして成りあがる。」名作『太陽がいっぱい』の主人公トム・リプリーが選んだ生き方とその時代背景
-
評論『詐欺師×スパイ×ジェントルマン』【第2回】鱸 一成
スパイも実はホワイト・カラー層なのだと気づかせてくれたのは、007ジェームズ・ボンドだ
-
評論『詐欺師×スパイ×ジェントルマン』【新連載】鱸 一成
パトリシア・ハイスミスとジョン・ル・カレ作品に登場するキャラクターに注目して読み解く