もう一つ筆者は指摘しておきたい。料理ができてワンマンショーもできるリプリーは、現代日本を席巻する「マルチタレント」を彷彿とさせる存在だ。このリプリーの「タレント」こそは、いまや日本でおなじみの言葉となった「タレント」や「マルチタレント」へとつながっていく才能なのだ注1)。作者ハイスミスは、リプリーの描写を通じて、生涯一つの才能や技術や芸を磨いていくプロフェッショナルとは別の「タレント」の在り方を…
[連載]詐欺師×スパイ×ジェントルマン
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評論『詐欺師×スパイ×ジェントルマン』【第5回】鱸 一成
アメリカ生まれの詐欺師トム・リプリーが向かった田舎が美しい国「イタリア」
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評論『詐欺師×スパイ×ジェントルマン』【第4回】鱸 一成
「紳士」という言葉から読み取る近代ヨーロッパ社会。後付けの才能が生み出す、歪んだ紳士のすがた。
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評論『詐欺師×スパイ×ジェントルマン』【第3回】鱸 一成
詐欺師から紳士へ「成りすまして成りあがる。」名作『太陽がいっぱい』の主人公トム・リプリーが選んだ生き方とその時代背景
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評論『詐欺師×スパイ×ジェントルマン』【第2回】鱸 一成
スパイも実はホワイト・カラー層なのだと気づかせてくれたのは、007ジェームズ・ボンドだ
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評論『詐欺師×スパイ×ジェントルマン』【新連載】鱸 一成
パトリシア・ハイスミスとジョン・ル・カレ作品に登場するキャラクターに注目して読み解く