【前回の記事を読む】夫が来たのは一度だけ、私が本当に一人で暮らしているのか、確かめに来ただけ。隣の椅子に手が知らずに動いていた。先ほどせわしく丸め置いた園芸エプロンを取り、立ち上がると、それをさっと胸前に広げた。茉莉は、―― 何事?―― と言うように顔を上げた。「どう見えるかしら?……私」、声が勝手に出ていた。自分ではない、ぶりっ子を装った声。「フローラの花守りに、見えるかしら?」茉莉の顔に一瞬…
[連載]薔薇のしるべ
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小説『薔薇のしるべ』【第11回】最賀茂 真
もう学生の頃とは違う――彼女の反応を見て、自分がとってしまった振る舞いに恥ずかしさと後悔の気持ちが揺らぐ
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小説『薔薇のしるべ』【第10回】最賀茂 真
夫が来たのは一度だけ、私が本当に一人で暮らしているのか、確かめに来ただけ。
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小説『薔薇のしるべ』【第9回】最賀茂 真
バラを通して心が交わる瞬間、そして"演技"を越えた本当の声──二人の距離はまたあの頃みたいに戻れるのか…
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小説『薔薇のしるべ』【第8回】最賀茂 真
あんなに一緒だったのに。月日が二人を分かち、別人のように見えてしまうほど残酷に時は経ってしまった。
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小説『薔薇のしるべ』【第7回】最賀茂 真
薔薇を、私の薔薇を見ている! それほど熱心に見てもらえるなんてと、突然喜びが湧いてきて…
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小説『薔薇のしるべ』【第6回】最賀茂 真
この日をどれほど切望してきた事だろうか。だが一方には、それを恐れる心が…。堰が切れるように、固く誓った事までも…
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小説『薔薇のしるべ』【第5回】最賀茂 真
まだ着いたばかりなのに、今にも帰るような話になってしまったのを悲しく思った。
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小説『薔薇のしるべ』【第4回】最賀茂 真
「泊めていただけるという事かしら?」 その声色は、本心を隠すようにしゃがれていた。
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小説『薔薇のしるべ』【第3回】最賀茂 真
「あの手紙が届いた時、一体何の事かと思ったわ」 薔薇が断ち切られた時間を再びつなぐ…
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小説『薔薇のしるべ』【第2回】最賀茂 真
青いシャドーに真紅のルージュをひいた友人。二十年ぶりの再会に嬉しいはずが…
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小説『薔薇のしるべ』【新連載】最賀茂 真
庭仕事をしていると誰かが訪れた気配がして見に行くとそこにいたのは…