花輪はその内側に光源があるかのように、仄かな点り色を見せて輝き出していく。その度にしみじみと思う。―― 薔薇は、他の花のように光を返して輝くのではなく、光を吸って輝くのだ―― と。一つの株であっても開き具合や花茎の位置によって花色に微妙な違いが生まれ、やがてそれらは混然と溢れる花群となっていく。 魔術のような時間、美が開く時。典子は色彩のシンフォニーに包まれ、魂の奥底までが共鳴していくのを覚える…
[連載]薔薇のしるべ
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小説『薔薇のしるべ』【第7回】最賀茂 真
薔薇を、私の薔薇を見ている! それほど熱心に見てもらえるなんてと、突然喜びが湧いてきて…
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小説『薔薇のしるべ』【第6回】最賀茂 真
この日をどれほど切望してきた事だろうか。だが一方には、それを恐れる心が…。堰が切れるように、固く誓った事までも…
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小説『薔薇のしるべ』【第5回】最賀茂 真
まだ着いたばかりなのに、今にも帰るような話になってしまったのを悲しく思った。
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小説『薔薇のしるべ』【第4回】最賀茂 真
「泊めていただけるという事かしら?」 その声色は、本心を隠すようにしゃがれていた。
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小説『薔薇のしるべ』【第3回】最賀茂 真
「あの手紙が届いた時、一体何の事かと思ったわ」 薔薇が断ち切られた時間を再びつなぐ…
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小説『薔薇のしるべ』【第2回】最賀茂 真
青いシャドーに真紅のルージュをひいた友人。二十年ぶりの再会に嬉しいはずが…
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小説『薔薇のしるべ』【新連載】最賀茂 真
庭仕事をしていると誰かが訪れた気配がして見に行くとそこにいたのは…