【前回の記事を読む】「猫好き?」転校翌日、さっそく3人の女子に町案内に誘われ…
転校
放課後、ちさが猫神さんにはるなを案内したいと言った。そこで、みやとさゆりの四人で学校前の道を、川の上流の方へと歩いた。道の両側は桜が花盛りで、小さな商店がいくつかあり、その店先にもプランタにパンジーやフリージャーがいっぱい咲いていた。
車の幅程しかない狭くて短いトンネルを越えた先で、道は大きく左に曲がり、道の右には中学校が、左には目的の猫神さんがあった。来た道からほんの二、三軒の民家が並んだ突き当たりに、大きな大人の背丈ほどもある招き猫が出迎えてくれた。
その足下には数匹の本物の猫もいた。白と黒の髪の毛を真ん中分けにしたような八割れの猫がニャーと鳴きながらはるなの足に二、三度頭突きをした。いきなりでびっくりしたが、はるなは少し身をかがめてじっとしていた。するとその猫が首やおなかをはるなの足に擦り付けてきて、左右の足の周りをくるくると回った。尻尾の先を少し撫でると尾をピンと立てて答えた。
みやの足にも茶虎の少し太目の猫がすり寄っている。みやがその猫の顎を軽く撫でるとグルグルと言って気持ちよさそうにしている。さゆりも白猫を相手にしている。ちさは地面に座り込んで四、五匹の猫と戯れている。
「ちさちゃんが一番もてるのね」
とはるなが言うと、
「前に来た時もそうだったよ。“猫ちゃんいらっしゃい”オーラが出てるだに」
とみやが答えた。
ライトグレーの毛糸玉のような猫が顔を持ち上げ目を細めながらちさに歩み寄った。ちさがしゃがみ込み、両手を猫の方に差し出すと、猫はその手に頭突きでもするかのように頭をぶつけ、そして、腕の中にストンと収まった。両前足でちさの左腕を抱きかかえ、頭をちさの身体に預けてグルグルと言い出した。くるっと頭を回転させて、まん丸な目でちさを見、そして目をゆっくりと閉じて、腕に顔を埋めた。