俳句・短歌 四季 2022.02.24 歌集「漣の夢」より3首 歌集 漣の夢 【第94回】 上條 草雨 中国江蘇省・無錫に留学し、その地の美麗さに心奪われた著者が詠み続けた、珠玉の短歌二一〇〇首と三九首の漢語短歌を連載にてお届けします。 この記事の連載一覧 最初 前回の記事へ 次回の記事へ 最新 六時過ぎ明るく成った夕暮れに緑の囲む自然親しむ 晴天日せいてんひ吹き渡る風香かぐわしく夏の間近な春の楽園 吟苑ぎんえんの草木くさきの繁茂水池みずいけに金魚も群れて生き生き泳ぐ
小説 『春のピエタ』 【第7回】 村田 歩 刑務所で、お袋と13年ぶりに対面…こんなに小さな女だったか―。あの頃、生活が苦しく、いつも歯を食いしばっていたお袋は… 俺たちは婆さんより早く呼ばれた。刑務官に案内されているとき、初めて親父が落ち着かない様子を見せた。首から下は先を行く刑務官に素直に従っているのに、首から上はまるで道を見失ったかのようにあたりをきょろきょろ見回している。勝手が違う、といった顔だ。俺は急に不安になった。悪い想像が浮かぶ。たとえばお袋は急病で、敷地内の医務室のベッドで身動きできなくなっているのではないか。だからいつもの面会室で会うこと…
小説 『鼠たちのカクメイ』 【第8回】 横山 由貴男 「大塩先生もおまえのと同じ銃をお持ちだ。名手だから、あとで教えてもらうといい」どんなひとなんだろう?大塩平八郎って。 天保七年(1836年)十月。意義とカイのふたりは、ひと月かけて江戸から大坂へ辿り着いた。現在の大阪市北区天満、桜の名所で知られる造幣局のある地域だ。そばには大川が流れている。意義たちは目的地に向かう途中の川崎橋から、河原で繰り広げられる非日常的な光景を見た。橋の上には見物客もまばらにいる。「あれは一体何ですかな?」旅商人らしき者が通行人に訊く。「ああ。洗心洞の砲術訓練ですわ」と事もなげに言うから…