俳句・短歌 四季 2022.03.03 歌集「漣の夢」より3首 歌集 漣の夢 【第95回】 上條 草雨 中国江蘇省・無錫に留学し、その地の美麗さに心奪われた著者が詠み続けた、珠玉の短歌二一〇〇首と三九首の漢語短歌を連載にてお届けします。 この記事の連載一覧 最初 前回の記事へ 次回の記事へ 最新 曇り空そら木々密ひそやかに佇んで心の波を静めて呉れる 水際みずきわに音も無く生え青葦あおあしの彩り冴さえて慰め貰う 新しく深緑しんりょく萌える雨上がり命輝く草木くさきの姿
小説 『春のピエタ』 【第7回】 村田 歩 刑務所で、お袋と13年ぶりに対面…こんなに小さな女だったか―。あの頃、生活が苦しく、いつも歯を食いしばっていたお袋は… 俺たちは婆さんより早く呼ばれた。刑務官に案内されているとき、初めて親父が落ち着かない様子を見せた。首から下は先を行く刑務官に素直に従っているのに、首から上はまるで道を見失ったかのようにあたりをきょろきょろ見回している。勝手が違う、といった顔だ。俺は急に不安になった。悪い想像が浮かぶ。たとえばお袋は急病で、敷地内の医務室のベッドで身動きできなくなっているのではないか。だからいつもの面会室で会うこと…
小説 『メグ動物病院』 【第10回】 後藤 あや 「こんな料金でいいんですか、今までのお医者さんは…」と言おうとしたら、イケメン獣医は「この料金、むしろぼったくり」と… 「お父さん、腕までの厚めのゴム手袋をするといいですよ」って言ったけど、メグ先生の腕は、傷だらけ。うっすら血も。豪快にマキロンを振りかける。ちょっと診察室を離れてた看護師の琴美さんが戻ってきて、「またなの」ってあきれ顔で言う。「何で待てないのよ、一人じゃホールドもできないじゃない。ばかね、痛いでしょ。私が朱美に叱られるのよ」って怒るから、みんなびっくり。「どうも教育がなっておりませんで」って先生言…