俳句・短歌 四季 2022.03.03 歌集「漣の夢」より3首 歌集 漣の夢 【第95回】 上條 草雨 中国江蘇省・無錫に留学し、その地の美麗さに心奪われた著者が詠み続けた、珠玉の短歌二一〇〇首と三九首の漢語短歌を連載にてお届けします。 この記事の連載一覧 最初 前回の記事へ 次回の記事へ 最新 曇り空そら木々密ひそやかに佇んで心の波を静めて呉れる 水際みずきわに音も無く生え青葦あおあしの彩り冴さえて慰め貰う 新しく深緑しんりょく萌える雨上がり命輝く草木くさきの姿
小説 『再愛なる聖槍[ミステリーの日ピックアップ]』 【新連載】 由野 寿和 クリスマスイヴ、5年前に別れた妻子と遊園地。娘にプレゼントを用意したが、冷め切った元妻から業務連絡のような電話が来て… かつてイエス・キリストは反逆者とされ、ゴルゴダの丘で磔はりつけにされた。その話には続きがある。公開処刑の直後、一人の処刑人が十字架にかけられた男が死んだか確かめるため、自らの持っていた槍で罪人の脇腹を刺した。その際イエス・キリストの血液が目に入り、処刑人の視力は回復したのだという。その槍は『聖(せい)槍(そう)』と呼ばれ、神の血に触れた聖(せい)遺物(いぶつ)として大きく讃えられた。奇跡の逸話(…
小説 『小窓の王』 【第2回】 原 岳 遭難事故報告書と彼の登攀道具をバッグにしまう。彼のことは、ほとんど知らない。彼の葬儀で、少しは聞いたが… 水だけでじゃぶじゃぶと顔を洗い、水滴を滴らせながら歯を磨く。石鹸を頬と口の周りに擦りつけ、目地もヒビもカビが埋め尽くしたタイルと白いウロコだらけの鏡に向かって髭を剃る。剃り終わるとまた顔を洗って石鹸を落とし、ついでに寝ぐせの頭皮まで水をかける。風呂場から出ると鳥肌はいよいよ隆起するがタオルはなく、水を滴らせながら台所に出て流しの取っ手にかかったタオルを取る。据えた醤油の臭いが肌につく。頭にタオル…