俳句・短歌 四季 2022.03.03 歌集「漣の夢」より3首 歌集 漣の夢 【第95回】 上條 草雨 中国江蘇省・無錫に留学し、その地の美麗さに心奪われた著者が詠み続けた、珠玉の短歌二一〇〇首と三九首の漢語短歌を連載にてお届けします。 この記事の連載一覧 最初 前回の記事へ 次回の記事へ 最新 曇り空そら木々密ひそやかに佇んで心の波を静めて呉れる 水際みずきわに音も無く生え青葦あおあしの彩り冴さえて慰め貰う 新しく深緑しんりょく萌える雨上がり命輝く草木くさきの姿
エッセイ 『振り子の指す方へ[人気連載ピックアップ]』 【第17回】 山口 ゆり子 妻の姉をソファーに連れて行き、そこにそっと横たえた。彼女は泣き続けながらも、それに抵抗することはなかった 【前回記事を読む】気が付けば、妻の姉に抱き着き声をあげて泣いていた。…妻が流産し幼児退行して2年。こみあげてくるものを耐えられなかったんだ静かに抱きしめ返してくる亜希子の背中をさすりながら、春彦は郁子とよく似た亜希子の温かさが二年の間にうらぶれた心をほぐしていくのを感じていた。あの日、同じように郁子を抱きしめられていたのなら、という思いと、もはや悲しみを共にする同士である亜希子が、どうしても春彦…
小説 『ツワブキの咲く場所』 【第23回】 雨宮 福一 「ぼろぼろのその靴がお前の人となり、だなんて俺には到底思えない」彼の手のぬくもりは、言葉よりも遥かに雄弁だった。 【前回の記事を読む】祈ったところで、何になるんだろう…カルト教団に洗脳され、結びついた両親。壇上に立つ老人は救世主でも神様でもなかった。「ああ。あのホールへもこの喫煙所にも、菅野と来たよ。洗礼を受けたのもここだ。そうだ、洗礼って知っているか?」「いや、よく分からないよ」「洗礼というのは、キリスト教徒になるとき、誰もが受ける儀式なんだよ。儀式の様子は、宗派でいろいろと違っていて同じじゃないんだが、…