俳句・短歌 四季 2022.03.10 歌集「漣の夢」より3首 歌集 漣の夢 【第96回】 上條 草雨 中国江蘇省・無錫に留学し、その地の美麗さに心奪われた著者が詠み続けた、珠玉の短歌二一〇〇首と三九首の漢語短歌を連載にてお届けします。 この記事の連載一覧 最初 前回の記事へ 次回の記事へ 最新 文化課ぶんかかの太極拳の初日しょにち目めに 見よう見真似で習う楽しさ 薄晴うすはれの爽やかな昼街まちの木々 涼しさに満ち葉影揺れてる 年金で上海に行く風景に 高速車多々たた緑を映す
エッセイ 『振り子の指す方へ[人気連載ピックアップ]』 【第17回】 山口 ゆり子 妻の姉をソファーに連れて行き、そこにそっと横たえた。彼女は泣き続けながらも、それに抵抗することはなかった 【前回記事を読む】気が付けば、妻の姉に抱き着き声をあげて泣いていた。…妻が流産し幼児退行して2年。こみあげてくるものを耐えられなかったんだ静かに抱きしめ返してくる亜希子の背中をさすりながら、春彦は郁子とよく似た亜希子の温かさが二年の間にうらぶれた心をほぐしていくのを感じていた。あの日、同じように郁子を抱きしめられていたのなら、という思いと、もはや悲しみを共にする同士である亜希子が、どうしても春彦…
小説 『イエスタデイを少しだけ』 【第4回】 惣才 翼 別れる気なんてない。先ずは、三万円を返そう。それも、ただ送り返すのではなく、何か上手い口実をつくって―。 【前回の記事を読む】信じていたし、死ぬまで見守ってほしいと思ってた。昨日のあの電話までは…。馬鹿!弱虫!卑怯者!裏切り者! 大好きだったのに。(笑わせるな! 勝手な屁理屈こきやがって。冗談で軽口を叩いただけじゃないか。くそっ! 今の時期、仕送りが届いたばかりで、懐具合は悪かぁねえや)珍しく長い雅子からの手紙を二度読み返した恭平は、強気な言葉とは裏腹に、雅子との別れの予感が胸いっぱいに広がっていく…