俳句・短歌 四季 2022.03.17 歌集「漣の夢」より3首 歌集 漣の夢 【第97回】 上條 草雨 中国江蘇省・無錫に留学し、その地の美麗さに心奪われた著者が詠み続けた、珠玉の短歌二一〇〇首と三九首の漢語短歌を連載にてお届けします。 この記事の連載一覧 最初 前回の記事へ 次回の記事へ 最新 花盛はなさかり地表を覆う芝桜薄紫に足元あしもと飾る 今年初蜻蛉はつとんぼと出逢う江南に初夏の訪れ敏感に告げ 青空あおそらに草木そうもく繁茂風そよぎ紋白蝶も飛び出して舞う
小説 『アイアムハウス』 【新連載】 由野 寿和 静岡県一家三人殺害事件発生。その家はまるで息をするかのように、いや怒っているかのように、大きく立ちはだかり悠然としていた 午前十一時。サイレンを鳴らさず、車両は静岡県藤市十燈荘(じゅっとうそう)に到着した。静岡中央市にある県警本部から十燈荘までは、藤湖をぐるっと大回りして藤市経由でトンネルを通り、小山を登ることになる。藤湖を見下ろす高級住宅街、十燈荘は、土曜の昼だが活気はない。既に外部への交通規制が敷かれているとはいえ、不気味に静まり返っている。ここで殺人事件があったことを、住民達が知っている気配はなかった。その家…
小説 『忍者風魔 ~戦国時代を生きた風魔小太郎~』 【最終回】 鏡本 ひろき まさか。お腹に赤ちゃんがいる? 胎動が感じられた。浅はかだったかもしれない…私は、本当に彼と共に人生を歩みたいの? 【前回の記事を読む】三年前にさらわれて村を出て、秋田へ。さらった相手と二人で暮らすようになり、ついには…杏が遠くの山を見て考えていた時、お腹が張り、腹痛に襲われた。─最近、よくお腹が張るけれど、慣れない北国で生活しているからだわ。六月とは言え、この寒い地域の気候のせいで身体が冷えているのかもしれない。杏は前屈(まえかが)みになり、お腹をさすっていると、お腹の違和感は、確信に変わった。─まさか。お…