KANAU―叶う―

優理は、この時に望風に対して生まれた気持ちのままに、今高校生となって、望風のそばにいる。

「だいちー」

「だーい、はやくしろよーー」

業間の廊下に彼を呼ぶ友の声が響いている。笑い声や話し声のにぎやかな騒音の中で、彼が如何に友に慕われているかがわかる。

大地は、人気がある。くだらないことばっかりして、先生におこられて、さぼって、笑って……。いたずら好きも愛嬌。望風は、大地の無邪気なところが好きだった。無邪気でなーんも考えてなさそうなのに、多分人の心を読める。優しさの種類が、甘くなくて厳しいのだと思う。でもフォローの隙がないほど、憎まれ口ばかり……。

けれど望風は大地を信頼していた。大地の作詞を知るとわかる。大地の奥深さが。少年のような無邪気さ、馬のような目、大地独特の気遣い、隠しているけれど素直で一生懸命、誰ひとり裏切らない。夢は必ず叶うと信じている、あらゆる人の幸せを願っている、希望を与えたい、強くなりたい……。

大地は儚い人だなあと思う。大地の優しさが新たな力を生んでいるように感じる。大地の大地にしかない可能性。それを才能というのかもしれない。

望風は、大地の少しかすれた、落ち葉のこすれあうようなシャカシャカした笑い声にいつも元気づけられていて、万人にその笑顔と声を分けてあげたかった。大地はきっと人を救う力を持っている。