六月二十六日 火曜日
少女と動揺とポニーテール 2
「そんな心配そうな顔しないでよ。わたしは、だいじょうぶだから」
先輩は、そう言って、わたしの髪に一度だけそっと触れた。
「この学校の生徒は、ドラマやマンガに出てくるような、陰湿ないじめとか集団リンチとか、そういうことはしないから。せいぜいガン無視がいいとこでさ」
冗談めかして笑う先輩。それはまるで、わたし一人が耐えればいいんだよ、と言っているようだった。先輩は、なにかを背負いこむとき、必ずそれを冗談や笑い話にしてしまう。きっとまた、今度のこともそうなんだ。
「わたし……先輩を信じ続けます」
「まいったな……」
結んだ髪の根もとに両手をやり、先輩は、チョコレート色のヘアゴムを指で伸ばした。
「あいかわらずきみは、とんでもなくいい子だよ、ポンタ。だけどね……」
先輩が、わたしの目をじっと見た。
「その優しさが、他人の重荷になることだってあるんだ」
重荷―その言葉が、突然投げこまれた石のように、心の奥底へと沈んでいく。
「わたし、重荷……ですか」
「信じるとか言われたって、それがつらいだけってこともあるんだよ」
「そんな……」