六月二十六日 火曜日
少女と動揺とポニーテール 2
教室に帰ったわたしたちは、すべての気力を使い果たしたように机の上へ突っ伏した。
「ポンちゃん、わたし今、メゲメゲの実の能力者になった。これから伊福部先生の授業なのに、もうダメだよ」
よくわからない弱音を吐くマオに、それでもわたしは深い沈黙をもって同調した。伊福部先生はわたしたちの担任。基本的には放任主義だけど、授業中だらけている生徒にはすごく厳しい。
「ねえ……ポンちゃん」
「なに?」
「先輩のところに行く前より、今のほうが、もっとわけわかんなくなってる」
「わたしだってそうだよ」
うなずくかわりに、わたしは、ゆっくりと机から顔をあげた。
「でも、先輩がなにか秘密を隠してるのは、まちがいない」
そして、わたしたちに、そのことを伝えようとしてくれた。
「うーん……だけど、だったらなんで、もっとわかりやすく言ってくれないの? 意味わかんないよ。イカの巣がどうとか」
「イカロスだよ、マオ……」
でも、マオの言うとおりだった。先輩の本当の思いがどこにあるのか、いくら考えてもまるでわからない……。わたしは、ぎゅっと唇をかんだ。
答えが出ないまま、わからないことばかり積み重なっていく。まるで、無限に続く疑問の扉をたたき続けているみたいだった。先輩を助けたいのに、その思いの出口がどこにもない。どれだけ手を伸ばしても、その手は、届くべき場所を見いだせないまま、虚空をもがき続ける。
―お願い。助けて、ミュウ。
気がつくとわたしは、心の中でそう叫んでいた。