六月二十六日 火曜日

少女と動揺とポニーテール 1

「なんでサキ先輩が、そんなことしなきゃいけないの? そんなことする理由がないじゃない!」

「理由は、あるんだよ……」

「そんな、そんなはず―」

「復讐、だって」

「復讐!?」

「ちょ……だから、大きな声出さないで」

「復讐って、それ、どういうことなの?」

「事件の被害者になった満田先輩はね、バレーボール部の部員なんだ」

え……じゃあ……二人は、いっしょにバレーをしてた、ってこと?

「サキ先輩が、バレーボールをやめちゃったこと、ポンちゃんも知ってるよね」

「……うん」

「わたし、その理由をべつの先輩から聞いてたんだ」

あんなに打ちこんでいたバレーボールを、先輩がやめてしまった理由―ずっと知りたかった。でも、それ以上に知ってしまうのが怖かった。

「その理由と今度のことと、どういう関係があるの?」

「先輩は、高校のバレー部でも、すぐに実力を発揮して準レギュラーになった。ところが、うちの部員どうしの練習試合で、ぶつかりそうになった相手をよけようとして、怪我(けが)をしたんだ。それも、足の(けん)を切る大怪我だったって」

「じゃあ……その……」

「うん。そのとき、ぶつかりそうになった相手っていうのが、控えの一年生で、初めて練習試合に加わってた満田さんだったんだ」

「その怪我が、先輩がバレーをやめた理由……」

「そういうこと」

とマオがうなずいた。