俳句・短歌 短歌 故郷 2021.08.26 歌集「星あかり」より三首 歌集 星あかり 【第68回】 上條 草雨 50代のある日気がついた。目に映るものはどれも故郷を重ねて見ていたことに。 そう思うと途端に心が軽くなり、何ものにも縛られない自由な歌が生まれてきた。 たとえ暮らす土地が東京から中国・無錫へと移り変わり、刻々と過ぎゆく時間に日々追い立てられたとしても、温かい友人と美しい自然への憧憬の気持ちを自由に歌うことは少しも変わらない。 6年間毎日感謝の念を捧げながら、詠み続けた心のスケッチ集を連載でお届けします。 この記事の連載一覧 最初 前回の記事へ 次回の記事へ 最新 誰よりも好きなのは誰誰よりも 想うは誰か恋慕が募る 恋情が激しく燃えて目を開ける 今一度の恋の投身 やつれ果て恋に没する我を見る 愛の亡き骸生ける屍
小説 『アイアムハウス』 【新連載】 由野 寿和 静岡県一家三人殺害事件発生。その家はまるで息をするかのように、いや怒っているかのように、大きく立ちはだかり悠然としていた 午前十一時。サイレンを鳴らさず、車両は静岡県藤市十燈荘(じゅっとうそう)に到着した。静岡中央市にある県警本部から十燈荘までは、藤湖をぐるっと大回りして藤市経由でトンネルを通り、小山を登ることになる。藤湖を見下ろす高級住宅街、十燈荘は、土曜の昼だが活気はない。既に外部への交通規制が敷かれているとはいえ、不気味に静まり返っている。ここで殺人事件があったことを、住民達が知っている気配はなかった。その家…
小説 『SHINJUKU DELETE』 【新連載】 華嶌 華 夫も娘も本当はいない、誤魔化してきた。起床して出勤、夜遅くまで働き、孤独に床に就く。同期連中も、新入社員も産休取得者も… 新宿に少女の姿はなかった。重たい体を引きずってマンションまで帰る。孤独に床に就き、起床して、出勤、毎日夜遅くまで労力を提供している。そのルーティンの日々に、ノイズがチリチリと音を立てる。本来の目的以外の要素が多すぎやしないか。どうしてお前らと親睦を深め、付き合いをしなければならんのだ、と喜美子は毒づく。同期の連中は、入社してから今に至るまで恋愛世界を楽しんでいる。「新しく入った〇〇くん可愛いよね…