「ところでカラスさんの鳴き声は朝からうるさいが、何を話しているんだい?」
「うるさい、とは気分悪いね。仲間との連絡網があって、遠くの仲間にも聞こえるように、大きく鳴くんだよ! しょうがない。縄張りが広くてね」
「この前、カラスさんの子の失敗を見たけど、親が教えてなかったのかな、と笑ってしまったよ」
「なんだい、失礼な言い方だね。人間に笑われるような落ち度は無いよ! 自尊心が傷つくね」
カラスはますます斜に構えて、ぎんちゃんを見上げます。
「ごめんごめん。いや、何があったかっていうとね、近くに、ラーメン屋があるよね。朝に残飯のごみがいっぱいネットに包まれて置いてある。
カラスさんの集団が集まり、隙間からなんとか食べようと突っついていると、一瞬、隙間がネットにできて、小さいカラスさんが入り込んで餌をがぶがぶと食べ始めたんだ。しかし、ネットが塞がってしまい出られなくなってね。
子はバタつき、泣きわめく。そこへ親らしきカラスが逆立って、早く出ろ! と泣きわめく。周りにいたカラスは、怖がって逃げ出してしまい、誰も助けなかったよ。集団生活なのに、他のカラスは冷たいのかと、人間みたいでつい笑ってしまった」
「ウーっ! 悔しいが、事実だ。カラスは結構、自分の身の危険を感じると皆逃げる。親子の関係が辛うじてあるが。人間もそうかい?」
ぎんちゃんは腕を組んで考えました。
「もっと、ドライかもしれない。仕事の関係で相手に思いも寄らず裏切られた、という残念な気持ちが時々あるから。集団生活の宿命かね!」
ぎんちゃんとカラスは向き合ってお互いの顔をじっと見てしまいました。
「変なところで共感しちまったな。面白い人だな、ぎんちゃんは」
しばらくして、ぎんちゃんが言いました。
「次回は、さいたま市は住みやすいか?でよろしく」
「なんだね、それは」
「人間と同じような感性をカラスさんは持っているから、力を借りて、地価の上昇を予測したくてね」
「ずる賢いカラスかい、ぎんちゃんは」
カラスはそう言って、びっくりするほど大きな声でカーッツと鳴くと、どこかへ飛んで行ってしまいました。