【前回の記事を読む】同僚の真由は勤務先の店長である長澤さんと不倫をしている。だが、彼は私にも手を――
不可解な恋 ~彼氏がお見合いをしました~
「まっさゆきさ~ん!」
化粧室から戻った真由が、長澤さんを背後から抱き締める。
「真由、かなり飲んでるな。大丈夫か?」
「うん、大丈夫で~す! ちゃんとできま~す」
「亜紀ちゃんも一緒に行く?」
長澤さんが私の方を見て口にした。『行く』とは何処へ? と思わず訊きたくなったけど、私はタクシーで帰るので、と伝えた。
「正幸さ~ん、亜紀にも気があるの?」
ムッとして真由が長澤さんに訊く。
「俺は可愛い子の味方。一番可愛いのは真由だよ」
そう言って、真由の頬にキスをした。
「あん、焦らされてるみたいで、恥ずかしい……」
「何だ、濡れてきたのか?」
「もう! そんな恥ずかしい事言われたら、我慢できないよぉ。早く行こうよ~。亜紀、バイバイ!」
長澤さんに身を委ねるようにして、真由と長澤さんはお店を出て行った。でも、お店を出るまで長澤さんは、いつものねっとりとした視線を私に向けていて気分が悪くなった。
「はぁ。帰ろ。マスター、お会計を――あ、真由の分っ!」
「大丈夫ですよ。お連れの男性の方がお支払いをしていきましたから」
「え?」
マスターの言葉に驚く。長澤さん、払ってくれたんだ。明日会ったらお礼を……いやいや、自分の分は支払おう。
アパートの自室に帰宅し、シャワーを浴びてリビングに戻ると、スマホに留守電が入っていた。