パソコン申告

昨年の春、糸島・志摩町役場に行きe-Taxによる税務申告用の住基ICカードの発行を頼んだ。これがないとインターネットを使っての税務申告が出来ない。

「はい、受付はしますが、カードをお渡しするのは、一週間か十日ほど後になります。出来たら連絡します」

「そんなに掛かるものなんですか?」

「はい、隣の前原市なら当日発行ですが、当役場は、他所に委託するので時間が掛かるとです」

と、役場の職員は言って、すました顔をしている。

五キロほど先の前原市では直ぐ出来るのに、わが町はやはり、「ド」がつく田舎か! やれやれ……。

それでも頼まなければ何時まで経っても、出来ない。ともかく依頼した。

結局、期間中には間に合わなかった。

パソコンによる申告だと、別途控除があり、さらに資料の提出が省略出来るので、最近は誰でも使っている筈である。

それなのに、我がマチは……。

予防接種

二年ほど前、大腸癌を患い福岡市の総合病院で手術や入院と、大変お世話になった。

今でも漢方薬を処方して貰ったり、年一回の検診などに通っている。

昨年の暮れ、通院したのでついでにインフルエンザの予防接種を頼んだ。

「はい、いいですよ、直ぐ出来ますけん、個人負担千二百円をあとで窓口で払うといて下さい」

とベテラン看護士は準備を始めた。

「ああ! 鈴木さん、すみましぇん、代金は千五百円でした。糸島でしたよね住所は?」

「そうですが、なんですか?」

「福岡市の住民は千二百円ですけど、糸島は福岡市内じゃなかですけん、これは自治体によって違うとですよ、注射はここでもしますが、料金はそげんなるとです」

結局千五百円を払った。

今まで、四十年以上東京や神戸など、大都会に住んでいたので、田舎に引っ越しをする時、多少の事は予期していたし、最近は慣れてもいたのだが。

バス路線

住まいの桜井から前原市のJR駅に行くには、一時間半に一本くらいの割合で、地元のバス会社が運行している、それのみである。

これも、国の補助金の導入で(まかな)っている、と車内の放送で言っている。

五十年以上も前だったか、

「いなかアーのバァスはおんぼろぐーるま、デコボコ道を、ガタゴト走る……」

と言う歌があったが、ここ糸島は小さなバスいわゆるミニバスがのんびりと走っている。勿論おんぼろでもなければ、デコボコ道でもない。

しかし、前原駅が中心であるから、放射状には伸びるが、横につながる線はない。

我が家のある桜井から芥屋(けや)方面へ行く路線などないから、地元の人はタクシーを使うか、誰かに乗せて貰うしかない。

何時だったか、こんな話を聞いた。

交番のおまわりさんが、桜井で一杯、気分良く飲んで帰宅するのに、まさか飲酒運転する訳にも行かない。

結局六キロあまりの道をとことこ歩いて帰ったとか。着いたら夜明け近くで、勿論酔いもとっくに醒めて、しかも寒かったと言う。