大磯義一郎構成員:予期しなかったという議論から始まるときに、弁護士の先生は、すぐに「過失」とか「過誤」という、法的責任に絡ませるようなニュアンスの言葉を使って、広げましょう、広げましょうという議論をするので、結局、医療者側は、やはり責任追及に使うのではないかという観点から反発してしまうのかなという気がしてならないのですね。私自身も、「予期しなかった」の議論が出た瞬間に、立て続けに弁護士がタタタタタッと広げる方に解釈するのが当然だという議論をしているのを見て、やはりちょっと違和感を覚えたのですね。

いずれにしても、どのような解釈をするかというのは裁量の幅があると思うのですけれども、入口の議論、要は何を届出するかという議論に関して、このままお互い、ある程度の利害関係を持っている状態の中で議論をするよりも、先に、要は出口のところ、報告や説明のところで、非懲罰性であったりとか、秘匿性というものが現場の医療者が十分に安心できるほどの担保がされていれば、入口の議論というのも、お互いの不信感からこういう争いをしなくて済むのかなと思っていて、したがって、もちろん厚生労働省で定めるというところを上から順番にやっていくのは筋道としてはあるのですけれども、いきなり最初の6条の10の1の入口のところを議論すると、多分、この形になってしまうと思うので、できれば6条の10の第2項であったり、6条の11の第5項、6条の17の第5項、出口の部分のところをしっかりと議論をした上で、入口はどうしましょうかという議論をしたほうが、議論がスムーズに進むのかなと思います。

有賀徹構成員:一人一人がいろいろなしゃべり方で表現しているわけですけれども、とんでもない言葉は多分、残らないとは思うのですけれども、いわゆるテープを起こしたような議事としての記録を残すというルールはあるかという質問です。

田上喜之医療安全推進室長補佐:本日、速記も入っておりますので、議事録はでき次第、公開することになってございます。

以上、議事要約を記したが、筆者は加藤良夫構成員の発言に一瞬、身構えた。「その死亡以前には、当該患者が、この時期にこのような経過で死亡するとは考え難かったもの」というのは、何かの判決文に違いないと考えたのである。加藤良夫構成員は、患者側として高名な弁護士である。この議論は用心しなければならない。安易に同意できない。この考えがずっと頭から離れなかった。一刻も気の抜けない会議であり、検討会終了後は一気に疲労感に襲われた。

・この項のおわりに

厳密に言えば、厚労省医療安全推進室お抱えの厚労科研費研究(「診療行為に関連した死亡の調査の手法に関する研究班 議論の整理」)と日本医療法人協会医療事故調ガイドライン(現場からの医療事故調ガイドライン検討委員会最終報告書)の2つが議論のたたき台の資料として施行に係る検討会に提出された。それぞれの報告書の内容の濃さの差は勿論であるが、第1回施行に係る検討会から、筆者が集中砲火を受けたこと、一つ一つに反論していったことから、結果的に、日本医療法人協会医療事故調ガイドライン(現場からの医療事故調ガイドライン検討委員会最終報告書)をたたき台として議論が進む結果となった。第2回目以降の施行に係る検討会は、施行に係る検討会その場だけではなく、厚労省との綿密な事前協議を経て議論が進行して行った。