上司をほめ殺す
相性の悪い上司に対して、最も効果のある対策は、上司を「ほめる」ことです。
「ほめるといっても、どこをほめていいのか」「そんなこといっても、ほめるところなどありゃしない」といった声も聞こえてきますね。それもそのはず。相性が悪いのですから、本当にそう思うのでしょう。
でも、ほめられて悪い気になる人は、まずいません。
スタンフォード大学のビジネススクールで教鞭をとる、組織行動学専門のジェフリー・フェファー教授も、ベストセラー著書である『「権力」を握る人の法則』の中で、次のように述べています。
「自分の仕事ぶりについて考える時、ぜひとも確認すべき点が一つある。それは、自分の行動や発言、そして仕事の成果は、上司をいい気分にさせているか、ということだ。いい気分というのは、あなたに満足するという意味ではなく、上司自身が自分に満足しているか、という意味である。あなたがいまの地位を確保し、さらに上へ行く確実な方法は、端的に言って上司をご機嫌にしておくことなのだから」(『「権力」を握る人の法則』ジェフリー・フェファー著、村井章子訳、日経ビジネス人文庫、51頁)
同書は続きます。
「上司を気分よくさせる最善の方法は、何と言っても誉めることである。このことは調査によっても裏付けられており、誉め言葉は影響力を手にする効果的な方法だとされている。誉められて悪い気のする人はいないし、誉めてくれた相手に好意を抱くのも自然な感情である。そして好かれれば、あなたはそれなりの影響力を持てるようになる」(前掲書、53頁)
いかがでしょうか。「相性がいい、悪い」に関係なく、上司を「ほめる」ことは、良い結果に結びつくわけですから、相性の悪い上司に対しても、「効果的」で、「手っ取り早い」手法であると言えます。
ここでのポイントは、「相性自体を改善させるまでには至らずとも、上司を気分良くさせることは可能である」ということでしょうか。
とはいえ、人をほめることは、実際にやろうとすると、なかなか難しいことでもあります。身近な人に対してでさえ簡単ではないのに、まして、相性の悪い上司を「ほめる」など、離れ業です。
そもそも、ほめるところがないのですから、とてつもなく厄介なことであると言えます。では、ほめるところが見当たらない上司に対して、実際にほめることはできるのでしょうか。
もしできるとしたら、どのような方法があるのでしょうか。
相性の悪い上司には「陰ぼめ」と「曖昧ぼめ」を
以前、職場で経験したことです。社内にどうしても相性の悪い同僚がいました。私が直感的にそう感じたのですから、当然相手もそう感じ取っているはずです。
会議の席でも、意見が対立すると、こちらが譲歩しても(したつもりです)相手が一歩も譲らないため、しばし、険悪な雰囲気に包まれることもありました。
でも、この同僚とうまくやらないと進まない仕事もあり、何か良い方法はないかと考えていました。そこで思いついたのが、「ほめてみる」ことです。
しかし、どのタイミングでほめるべきなのか、測りかねていました。どうも、直接ほめるのは厳しいようです。