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私が空を飛ぶ理由~つばめのつばさ~

タイムリープは飛ぶより難しい?

課題はある。一つは時間の問題。はたして東京から四国まで夜の間に行って、目的を果たせるか。空が明るくなって見つかりそうになったら、公共交通機関で帰ればいいだろう。問題はスピードだが、夢の力を借りれば何とかなるだろうか。

もう一つはタイムリープだ。「てる」が亡くなった日も、火が付いた時刻も私は知らない。「てる」を救うにはそれを調べてかつ、直前の時刻をめざしてタイムリープしなければならない。

飛ぶだけでも奇跡なのに、タイムリープして指定の時間に戻るなんて、あの『バック・トゥ・ザ・フューチャー』だって天才ドクの力も借りて偶然うまくいったに過ぎない。科学者でも何でもない自分にとってそれは奇跡の奇跡に近い。

けれどほかに道もない。初めて空を飛ぼうと信じて飛べた奇跡を思い出して、やってみるしかないだろう。

その日の夜から、昔の写真を見ながら寝ることにした。まずは日時がはっきりとわかる近い時代から遡って練習してみよう。遡って写真フォルダーを開く。一人暮らしを始めて以来、変化のない毎日だと思い込んでいたが、娘は高校、大学に進んでも年に何度か付き合ってくれていた。

寝る前に怖い映画を見ると夢に出てくると聞く。よくわかる。その日に見聞きし体験したこと、喜怒哀楽を突き動かされたできごとがその日の夢に出てきやすい。

条件としては、印象深くてよく覚えている体験があった日。となると娘の中学生時代より前になるだろうか。人に見つかったら大騒ぎになるかもしれないので、夕方以降がいい。

万が一にも娘と鉢合わせしたら、父親が二人になって相当混乱するだろう。暗くなってからにしよう。夜なら多少低く飛んでも見つかる可能性は低い。

相手は中学生だけに、夕方以降となると限られてくる。クリスマスの近い冬のある日、彼女の誕生祝いにステーキレストランにディナーに行ったことがあった。元妻も付き合ってくれて三人で食事をするのが年中行事の一つになっていた。

室内だと空からはよく見えない。近くの暗がりから窓を覗いて確認するしかないだろう。レストランは住宅地の広い敷地に立っていた。石造りのお城のような瀟洒な洋館で、小さな公園が隣接していた。フロアの窓は大きく、カーテンもなくて外がよく見えた。夜なら少し離れていても中のようすが見やすいだろう。

メインのステーキになり、シェフが目の前の鉄板で軽やかに切り分けて、娘から順に盛りつけた。印象的だったのは、ひと口目を口にしたときの娘の反応だった。少しもぐもぐとしたかと思うと、左右に座っていた私たちに大きく開いた口の中を見せて指さした。さすがに行儀が悪かったのか、見開いた目と笑顔で「お肉が一瞬で融けてなくなったよ」と訴えていたのがわかった。

ブランド肉の価値を理解できたかどうかは怪しいが、そんなことはどうだっていい。去年は苦労しながら何日も徹夜して仕上げた絵画コンクールの作品が入選したと知らされた。

そのお祝いも兼ねて奮発してよかった。