「そんなら、どうする? 恋ばなでもする?」
「あんまり気乗りしないけど、まあ勉強よりはいっか」
僕は無意識にそんな提案をしたが、男子は女子が好きな恋ばなは苦手だ。何をしゃべればいいかわからない。
「あんた好きな人いるの?」
「うーん、いることはいるけど。片想いかもね」
「そうなんだ。優しそうだから、モテるのかと思った」
「モテないよ。彩さんは、どうなの?」
「私? あんま興味ない。男、エロいから。気に入ってた先輩がいたけど、無理やりセックスされたし。だから、いいよ、男は。でも、あんたのことは、まだわかんない。好きなのか、どうか。あんた、何歳も年上だし」
「そっか。だって僕は家庭教師だから。好き嫌いの対象じゃないよ。とにかくいまは彩さんを守る責任があると言うことさ」
彩さんは、僕の言葉を等閑視していた。自分に不利な言葉には聴く耳を持たなかった。