【人気記事】JALの機内で“ありがとう”という日本人はまずいない
レッドオーシャン戦略からブルーオーシャン戦略へ
シェアを争う競争の激しい既存市場を「レッドオーシャン(赤い海、血で血を洗う競争の激しい領域)」とするなら、競争のない未開拓市場である「ブルーオーシャン(青い海、競合相手のいない領域)」を切り開くべきです(図表5-5)。
ブルーオーシャン戦略の成功事例としては任天堂のWiiや、10分1000円のヘアカット店、シルク・ドゥ・ソレイユなどがあります。任天堂のWiiが登場する当時のゲーム機PS3を代表するようにどんどん高機能になっており、単独で遊ぶ青年男性を対象にしたものばかりでした。子供の時からインベーダーゲームしか知らない私には、ついていけない高機能でした。任天堂のWiiは操作を容易にし、高齢者でも遊べるゲーム機としました。ゲームオタクからみればやや低機能とも感じるものもありますが、個人でなく家族がみんなで遊ぶゲームとなりました。
また生活に密着した機能も有していましたし、低価格でした。10分1000円のヘアカット店もシャンプー、髭剃りなどコストをカットしながら、高回転で多忙なビジネスマンのニーズにマッチしていたと言えます。無駄な理容師との会話も必要ありませんので、理容師も楽ですし、顧客もいちいち益のない世間話をする必要もなくなりました。シルク・ドゥ・ソレイユは、既存のサーカスと一線を画し、オペラやロックの融合から、サーカスでもミュージカルでもない独自のエンターテインメントを創造しました。
以前私もラスベガスで見たことがありますが、シルク・ドゥ・ソレイユは従来のエンターテイメントのカテゴリーには属さない独自のエンターテインメントです。医薬品ですと、現在競争の激しいのはC型肝炎の経口薬です。種々の薬剤が登場し、いずれの治療薬も98%程度でウイルス排除が得られ、副作用もほとんどありません。薬剤価格が高額で、熾烈なシェア争いを繰り広げています。
製薬企業間でシェアの奪い合いとなりますが(レッドオーシャン)、できるだけ多くの国民にC型肝炎ウイルスの排除を目指すためには、シェアの争いよりも分母の数を増やす戦略、すなわちブルーオーシャン戦略へ移行すべきと考えます。まだ治療を受けようとしてしてない患者や、感染に気づいていない人々を掘り起こすことです。ドラッカーが企業とは「顧客を創造するもの」と定義したように、製薬企業も、シェアの争いでなく、ブルーオーシャン戦略を取るべきだと考えます。病院経営も同様で、地域の中で顧客(患者)を奪い合うレッドオーシャン戦略から新たな顧客(患者)を創造するブルーオーシャン戦略への移行が必要です。