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プロローグ

彼の哲学は、宗教的体験のみを記述したものではなく、西洋の諸哲学と同じ次元で思惟­された哲学でもあったと思う。

つまり、現実の世界の構造を根底から論理的に解明するこ­とだった。

「純粋経験」「無の場所」「行為的直観」「絶対矛盾的自己同一」などの独特な用­語は、従来の論理によってはとらえられない根本的な事実をより具体的に認識できる論理­として構想された哲学なんだ。

なので、彼の哲学は宗教・自己・身体・生命・歴史・芸­術・科学などを含め多種多様な領域に影響を及ぼしてきたんだ。­

エミリア:それぞれの国にも独特な哲学者がいて、その内容に普遍性があれば他の国の­人びとにも影響を及ぼすのよね。­

イサオ:ぼくは和辻哲郎という人も日本の哲学者として評価している。多くの著書を残­し、それぞれの国や地域の風土の上に成立する人間の思想や文化の型が規定されると主張する独自な文化史論を展開している。

各地の文明化も風土の多大な影響を受けているから­ね。それから、世界的に文明化が進んだ民族が、そうではない民族の地域に侵入したのは­人類史上の事実であり、人間の本性にも弱肉強食の素性があるんだよね。

­エミリア:地球上の風土、つまり気候は植物や動物の生態系とか家屋や服装、さらに食­べ物にも影響するわね。­かつて古代のヒトはごく小さな集落で暮らしていて、文明化とか産業改革などに伴い、­徐々に大きな地域、つまり、小さな町から大きな都市まで多様化してきたのよね。

首都は­基本的に最大の都市に所在するけど、人口がそこに一極化すれば、国内経済が不均等にな­り望ましことではないと考えるわ。­

イサオ:日本では東京に人口が集中しているけど、歌の文句に「東京砂漠」とか、社会­的人間関係では「隣の人は何する人ぞ」などのような荒涼とした風景としてイメージされ­ることもあるんだ。­

ところで、仏教は古代インドの釈迦族の王子であったゴータマ・シッダールタがその地­位と妻子を放棄して二九歳で巡礼生活に入り三五歳にして悟りを開いたといわれている。