俳句・短歌 四季 2021.03.25 歌集「漣の夢」より3首 歌集 漣の夢 【第14回】 上條 草雨 中国江蘇省・無錫に留学し、その地の美麗さに心奪われた著者が詠み続けた、珠玉の短歌二一〇〇首と三九首の漢語短歌を連載にてお届けします。 この記事の連載一覧 最初 前回の記事へ 次回の記事へ 最新 今春も出会いの見れた燕つばめ哉 超高速で目の前掠かすめ 暁あかつきを迎えた自然愛溢あふれ 恵みに満ちる自転の奇跡
小説 『春のピエタ』 【第7回】 村田 歩 刑務所で、お袋と13年ぶりに対面…こんなに小さな女だったか―。あの頃、生活が苦しく、いつも歯を食いしばっていたお袋は… 俺たちは婆さんより早く呼ばれた。刑務官に案内されているとき、初めて親父が落ち着かない様子を見せた。首から下は先を行く刑務官に素直に従っているのに、首から上はまるで道を見失ったかのようにあたりをきょろきょろ見回している。勝手が違う、といった顔だ。俺は急に不安になった。悪い想像が浮かぶ。たとえばお袋は急病で、敷地内の医務室のベッドで身動きできなくなっているのではないか。だからいつもの面会室で会うこと…
小説 『浜椿の咲く町[人気連載ピックアップ]』 【第38回】 行久 彬 泣く泣く置いてきた息子が父親に叩かれて痣のできるほどつらい目に合わされているとは夢にも思っていなかった… 電話があってから相談所の職員と逢う三日後の約束の日まで雅代は、幹也の顔を思い浮かべながら不安な日々を過ごした。雅代は、約束した日時に児童相談所の上原と名乗る女性職員と大阪難波駅の改札口で落ち合い、落ち着いて話のできそうな駅近くの喫茶店に入った。「あそこにでも座りましょうか」上原は喫茶店のレジから離れた奥まった四人掛けの席に雅代を誘った。隣の椅子に脱いだグレーのチェスターコートを置き、椅子に座ると…