それだけではない。ダウンロードサイトがあり、確かに「WHOドラフトガイドライン」英語版がダウンロードされた。
議論の根幹であるWHOドラフトガイドラインについて、厚労省担当者がとんでもないミスリードをしたということである。
・第2回科研費研究班記者ブリーフィングの問題と第3回科研費研究班の混乱
2014年(平成26年)8月6日開催の科研費研究班会議は、30分遅れて始まる異様な会議になった。
筆者の随行員の坂根みち子医師(現場からの医療事故調ガイドライン検討委員会委員長)が、事務手続きの些細なミスを理由に、議長職権で退席させられたのである。
しかし、主たる問題はこの退席問題ではない。そもそもの問題は、7月30日開催の第2回科研費研究班会議後の記者ブリーフィング内容に重大な瑕疵があったことである。
第2回科研費研究班会議は、現場にとって重要な課題である「医療事故の報告に関する事項」が課題であった。改正医療法第6条10第1項の「当該管理者が当該死亡又は死産を予期しなかったもの」の規定に関わる事項であった。
「予期した」か「予期しなかった」かということと過誤の有無は全く別の概念である。筆者は、報告すべきは「管理者」「医療従事者」ともに「予期しなかった」ものに限るべきであり、過誤とは切り離すべきであると主張した。
他の委員からも法律に準拠して行うべきである旨の意見も出された。しかし、科研費研究班会議は、モデル事業前提の出来レースで進行した。
モデル事業は医療崩壊の原因となった第3次試案・大綱案に基づくものであり、今回の改正医療法とは枠組みが異なる。モデル事業ありきの進行は法からの逸脱であり、現場医療者の人権侵害につながる問題である。
第2回科研費研究班会議は各委員の意見の聴取のみであり、何らコンセンサスの得られたものではなかった。ところが、会議後の記者ブリーフィングで、あたかもコンセンサスが得られたかのような広報を行ったのである。
しかも厚労省が同席していた。日本医療法人協会が最も重要視している要の部分であり、合意できるものではない。それを、あたかも合意したかのような報道は看過し難い。