俳句・短歌 歴史・地理 短歌 平安の都 2021.03.02 歌集「花と散りにし」より三首 花と散りにし 【第30回】 松下 正樹 平安末期、国を二分する戦いが起こった。それは保元の乱と呼ばれる戦乱であり、古代から中世へと、貴族政治から武家政治へと時代を切り拓いていく端緒となった。 この乱の原因である天皇家と藤原摂関家の内紛から崇徳院の配流という結末までの経緯が詠まれた創作短歌を連載でお届けします。 この記事の連載一覧 最初 前回の記事へ 次回の記事へ 最新 三年前山の天狗の像の眼に釘を打ち込み呪ひをかけしと おぞましき呪ひをかけしは頼長の仕業なりしと噂ひろがる 近衛帝(こんゑのてい)眼をわづらひて永かりき僧の祈禱も薬も効かず
小説 『恋愛配達』 【第15回】 氷満 圭一郎 配達票にサインすると、彼女は思案するように僕の顔を見つめ「じゃあ寄ってく?」と… 「本業は酒屋で、宅配便はバイトです。ところでさ」ぼくはたまらず差し挟まずにはいられない。「さっきからなんなの、どっち、どっちって?」「だってあなた、ドッチ君だもん」「何、ドッチ君て?」すると瞳子さんは、ぼくの胸に付いている名札を指差した。これは配達者が何者であるのか知らせるために、運送会社から貸与されているものだ。ぼくの名前は以前病室で宴会を開いた時に教えていたはずだが、漢字までは教えていない。…
小説 『虹色の魂』 【新連載】 青居 蒼空 「光は俺に似て二枚目だなあ」「うん、お父さんも僕に似てかっこいいよ」 青い空を眺めていると、いつの間にか僕は、雲の上で浮いていた。見下ろすと、真っ青な海が広がっている。空も海も綺麗なのに、急に不安になった。「お母さん」僕は呟き、母を捜そうとその場を離れようとするが体がいうことを聞かず、ただ浮いているだけだった。「お母さん!」今度は大きな声で母を呼んだ。すると突然、空が赤くなり、僕は真っ逆さまに海に向かって落下した。体中に針が刺さったような感覚を覚える。痛みはないが…