「脳梗塞・認知症・運動器症候群(ロコモ)」三大疾患、2人の医学博士が徹底解説。高齢者が自立して健やかな老後を送るためのノウハウ満載。医療従事者だけでなく、介護・福祉関係者も活用できる知識をお届けします。
認知症と紛らわしい病気
◎パーキンソン病とは?
1817年にJames Parkinsonが、「An Essay on the Shaking Palsy」の題名で発表しました。その後、振戦(shaking)は常ではないこと、麻痺(palsy)ではなく無動・筋強剛であることから、Jean Martin Charcotがパーキンソン病と命名することを提唱したとされます。
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パーキンソン病は、運動を円滑に行う脳幹(中脳黒質)のメラニン含有神経細胞の変性・減少・脱落と、レビー小体の出現を特徴とします。この黒質神経細胞から軸索が伸びて線条体に達して神経伝達物質としてドパミンを分泌します。
パーキンソン病では、ドパミンが減少し、筋肉を意思通り動かすことができずに歩行障害が起きたり、手足の震え・硬直などが起こったりします。運動症状は、振戦(ふるえ:手足が震える)、筋強剛(固縮:筋肉がこわばる)、無動・寡動(動きが遅い)、すくみ足、姿勢保持障害(前傾・前屈姿勢、腰曲がり、斜め徴候、首下がり:バランスがとりづらい)などがみられます。
非運動症状としては、認知機能障害、嗅覚障害、排尿障害、気分障害(うつ)、睡眠障害、自律神経障害、知覚障害、レム睡眠行動異常、病的賭博(ギャンブル依存症)などがあります。
我が国の患者数は人口10万人につき100~150人くらいと推測され、決して珍しい病気ではありません。日本では指定難病となっています。
通常、進行の程度はヤールの重症度(Ⅰ~Ⅴ度)によって判断されます。中年以後に多い疾患ですが、20代から80歳近くまで幅広い年齢で発症し、男女差はありません。通常遺伝はしませんが、若年発症の一部は遺伝します。しかし、パーキンソン病の初期の場合や症状が似た病気(パーキンソン症候群)との区別などにおいては、診断が困難なこともあります。頭部のCT・MRI検査や血液検査などを行い、パーキンソン病以外の原因(パーキンソン症候群)を除外します。