風が優しく撫でて柔らかな陽射しが降り注ぐという表現がぴったりな二時少し前、勢いよく追い越していく車の障害物と化してのろのろと車道の脇をクロスバイクで走る。普段授業を受けているエリアから五百メートルほど離れた別のエリア、大通りから門をくぐってすぐの指定された場所には、人工芝の間に砂が混じったようなコートが三面あった。そのうち二面ではテニスウェアに身を包んだ人たちがすでに打ち合っていた。

僕は掲示板に貼ってあった通り、何も持たずに(といっても何も持ってないのだが)、普段履きのランニングシューズ、ジーンズに綿シャツ+スタジャンと朝着て来たままの格好で受付に向かった。

受付で先輩と思しき人に怪訝な顔をされたので不思議に思ったが、その理由はコートに集まっている体験希望者を見るとすぐにわかった。みんなスウェットなんかをきっちり着て来ているのだ。大半がラケットも持参している。人とまったく同じことをするのは嫌だけど、違いすぎるのもどうかと思うので、すでに居心地が悪かった。

このテニスサークルはどの学部の生徒も入ることができる。だから総勢十数人いる体験希望者は見たことのない人ばかりだ。男女比は半々くらいだろうか。友達と一緒に来た人が多いのか、すでにいくつかのグループに分かれて待機していた。

軽く体操して体をほぐしてから、まずボールを打ってみましょうとのことで、『球出し』をしますと言われた。一面のコートを使い、ネットの付近から先輩がボールをハエが止まるほどゆっくりと打ってくれて、それを反対側のコートに打ち返すというものだ。

ラーメン屋にできる行列のごとくやや曲がりながらも縦に並び、初めだけ学部と名前を言ってから打ち返す。一球交代で列の後ろに並び直すのだ。