春の出会い
邪気:90 代謝:80 正気:80
入学式は落ち葉が似合いそうな木々に囲まれた大講堂で行われる。
正面入り口のずいぶん手前から、新入生とそれを取り囲む父兄がすし詰めの状態だった。有名難関大学といっても、これほどの人数が入学するんだから、なんだかたいしたことないなと僕は漠然と思った。
斜めから差し込むできたての朝の光、それに反して清々しさがまるでないむせかえるような空気の中に、年齢がかなり上に見える人も中学生のような子もいる。
カメラをかまえる父兄の微妙な動きと、あちこちから漏れる話し声に気を取られつつ、学長の長い話、ゲストのもっと長い話をありがたく拝聴した。
その後場所を変えて、学部ごとの説明会、各学科に分かれて約四十名との顔合わせ、解散と式次第に沿って進む。
そしてこれもありがちな流れにしたがって、騒然とする農学部資源生物科の教室で、近くの人と自己紹介などをしていく。ここではややアドリブが必要だけど、当たり障りのないように振舞う。
元来人付き合いの苦手な僕にはこれが一番の難関だった。それでも組みしやすい数人の男子とは話ができた。不得手な女子とは二、三人と挨拶したくらいで、名前さえ聞けなかった。
農学部の中でもこの学科は女子の割合が高く、三分の一くらいはいそうだ。数多の神様のおかげでここにいさせてもらっている僕にはみんな賢そうに見えて、(性格なんかきついんやろうな)と邪推した。