解散後、校門であらためて校舎を振り返る。黒ずんだコンクリートの壁に耐震補強の跡が見える。お世辞にもきれいとは言えないけれど、校舎に惹かれて来たわけではないからそれはかまわない。むしろ歴史を感じさせる分、中途半端に新しい建物よりも良い印象に映る。
僕は中学の頃から漠然とこの大学に来たいと思っていた。数多くの著名人を輩出しており、そういった方々が書いた本を読んでいると、最初は淡い憧れだったのが次第に目標に変わっていった。
ただ、高校まで野球ばかりしていた僕にとって、この大学入学というハードルはかなり高かった。中学高校時代の成績は下でもないが上でもなく、先生からも褒められもせず怒られもせずという程度だったのだ。
けれども、目標が決まるとがむしゃらにやるタイプであることと、対ヒトになると途端に何もできなくなるが、一人で放っておかれるとそれなりに集中して頭を使えるという性質は、そのハードルをクリアするのには都合が良かった。
一年浪人はしてしまったけれど、最後に神様が微笑んでくれた結果が今なのだ。
ひとまず上ることができた、本で見た諸先輩方がいたフィールド。興味を誘うたくさんの分野が思い浮かぶ。その中から自分がじっくりと追及できるものが見つかるだろう。それはきっと無限に上っていける可能性がある。
もちろん一つのことだけではなく、たくさんの経験もして、ともすると殻に閉じこもってしまう自分も変えていきたい。それも今からここで成し遂げることができるだろう。見晴らしがいいところまで行きたいし、新しい景色も探したい。
そんな茫漠とした期待も抱きながら、建物を見上げた。
※本記事は、2020年11月刊行の書籍『桜舞う春に、きみと歩く』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。
★邪気指数、新陳代謝指数、正気指数
漢方の立場で見た、主人公沢波俊樹の体調を示します。本来、漢方にはこんな指数はありませんが、これに近いことをもっと細かく考えながら対処します。これらの変化は人によって異なります。
●邪気指数
体の中に溜まった不要なもの(邪気)の量を示す指数です。邪気は誰の体の中にもあります。食事の質や偏り、嗜好品、食べる時間などで変化しやすく、新陳代謝指数が下がり排出が悪くなることでも上昇します。邪気がかゆみの元にもなることがあります。ここでは50~150を正常範囲とします。150を超えると体調を崩しやすくなります。ただし、正気指数が高い方は、邪気指数が高くなっても体調を維持することができます。
●新陳代謝指数
体の中の、良い物(正気)、悪い物(邪気)がどれだけスムーズに動いているかを示す指数です。通常人が生きていく中で、良い物(新)を取り入れて、いらないもの(陳)を排出しています。それがスムーズに動いていること(代謝)が大切です。飲食の消化吸収、大小便での排出、血流、発汗などトータルの指数とします。運動不足やストレスなどで低下します。ここでは70~100を正常範囲とします。新陳代謝指数が下がると邪気指数が上がりやすくなり、下がっているときには正気指数も下がっていることが多くなります。
●正気指
数
体の元気(エネルギー≒正気)の指数です。バランスの良い飲食で満たされ、ほど良い休息をとることで作られます。逆にストレスや過労で低下します。正気が少なくなると、体のだるさや意欲の低下がみられ、免疫をコントロールする力が弱り、かゆみを抑えられなくなり、症状が悪化します。ここでは70~100を正常範囲とします。正気指数が高いと新陳代謝指数は上がりやすく、邪気指数が少々高くても生活に支障はありません。